ゲー音徒然文 『色彩』と春

※『Fate/Grand Order』の1部ネタバレあり

季節の変わり目となった。
春と言って思い浮かぶ曲は、アニソンやJ−POPなど色々あるのだろうけれど、ゲーオタである私の場合はゲーム音楽だ。

で、春っぽい曲って何があるかなー、とウォークマンのフォルダを漁って出てきたのが、坂本真綾の『色彩』だった。

「いや、どっちかと言うと冬の曲やろ」と思うマスターも居るかもしれないが、ちょっとだけ話に付き合って欲しい。実質春っぽい曲だから。

FGOのOP曲であり、ある種のED曲でもある『色彩』。
リリース初期から始めた時は「なんかカッコイイ曲だなー」という印象だったが、第1部を終えてから聞くと「あー……」としんみりした気持ちになってしまうから、この曲の仕組みは凄い。

FGO1部をクリアしている人は十分ご存知だろうが、内容は、1部のキーマンであるマシュを軸に作られている。歌詞の「あなた」と「私」が誰のことを指すか分かると、急に見えるものが変わるのだけど、とてもFateシリーズらしい歌詞だ。

さよならまで あなたのそばにいたい
その日が明日来ても惜しくはない
私に色彩をくれた人
あなたといる世界を目に焼き付けたい

死ぬことが怖いんじゃない。藤丸立香のために、命を燃やし尽くすのが、自分の生きる理由。

シナリオもこの曲にうまくシンクロしてて、物語が進むなかで、歌詞の意味が段々と見えてくる。終盤で、『色彩』の歌詞を持ってきたセリフが出てきて、「あー、この子のための曲だったんだ……」とハッキリ理解してしまった時には、『色彩』が胸にグッサリと刺さって抜けなくなる。

そんな歌詞を、ここぞというサビで叩きつけてくるからこの曲は強い。

ラスボス戦でも、オーケストラアレンジの『色彩 ~訣別の時来たれり~』の流れるわけだが、その時にはマシュ(とロマニ)は既に死んでいる訳で、壮大な音楽を背景にボロボロ泣きながら戦うことになる。二度ズルい。

生きる人の思い、散っていく人の思い。この曲をなにげなく再生するたび、『すべての命に終わりがあるのに』という歌詞が、センチメンタルな気持ちを生み出す。

『色彩』は物語とリンクした「ゲーム音楽」の極地であり、「命のきらめき」の哲学をぶつけてくる曲とも言える。

そういう意味で、作品的には冬の曲かもしれないけど、少し暖かくなってきたこの時期に聞くには、悪くない曲だ。新社会人、新入生が入り混じる駅のホームで聴いたりすると、何とも言えない気持ちになる。

そして、「春」「Fate」といえば、もうすぐ、劇場版HF最終章も上映される。

物語の終わりと始まりとなる、「春の曲」がまた一つ増える。3月末が、楽しみだ。


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