雑文 #303 トゲトゲ
時々現れるトゲトゲ。
たくさんの尖った突起が付いていて、真っ赤で、熱い。
トゲトゲは怒ってる。
熱くて暑くて、イライラしてるのだ。
熱いし痛いし、触れない。
なんとかなだめたいけれど、どうしたものか。
まずこのトゲを溶かそうと思った。
無色透明の、ひんやりとした、とろりとした液体。
水飴みたいなこの液体を、トゲトゲにかけてみよう。
ゆっくりそろりと、かけてゆく。
水飴みたいな液体の、何かのエキスが化学反応して、トゲを丸くしていった。
温度も下げていった。
トゲトゲはちょっとデコボコしてるだけの球体となった。
温度も人肌ぐらいになり、触れるようになった。
「悪くない、この感覚」元トゲトゲは言った。
私は元トゲトゲをもっと楽しませたくなった。
「どこかへ連れて行って」と元トゲトゲは言う。
私は森に連れて行くことにした。
木が生い茂り、見たことないような花が咲き、川が流れてる森の中へ。
私たちは草に寝転び川のせせらぎを聞いた。
私がうとうとしていると、話し声が聞こえた。
元トゲトゲが、木や植物と話しているのだ。
とても楽しそうだった。
暑くてイライラトゲトゲしてた頃の怒り顔とは全然違った穏やかな顔になっている。
良かったね、元トゲトゲ。
また次なるトゲトゲが現れるかもしれない。
そんなときはまた、水飴みたいな液体をゆっくりかけてやり、森に連れ出してあげればいいのだ。
辛抱強く、諦めず。
トゲのない世の中なんてないのだから。
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