昔々あるところに…その7

おじいさんとおばあさんが『桃太郎』を育て始めてから

約3ヶ月が経ちました。

「……のぉ、おばあさんや」

「……なんです、おじいさん」

「この子を拾ったのは何年前かのぉ……」

「いやですおじいさん、ほんの3ヶ月前ですよ」

「そうじゃよな、ワシ、まだボケとらんよね?

 んじゃ何故桃太郎は二足歩行しとるんじゃ……?」

「さぁ……それは私にもさっぱり。

 先月急にハイハイが始まり、

 そう思えばもう自分の力で立ち上がっていました」

「明らかに不自然じゃ。ワシの知識の中では約半年から8か月でハイハイ、

 約1年でようやく立ち上がって歩行を始める、と思っておったが、

 これは調べる必要があるのぉ」

~数時間後~

「恐るべきことが判明したのじゃ。

 なんとこの子は常人の約4倍の速度で成長しておる」

「4倍っ!?ということは……」

「うむ。このままいくと一年を待たずして保育園に行くことになる。

 いや、その前におむつの数もどうなるかわからんのぉ。

 通常オムツ離れまでに使用するオムツの数は平均すると

 約6000~7000枚と言われておる。

 じゃが桃太郎の場合はどうじゃ?

 もしかすると約1500枚に減ったりするのかのぉ?

 そうなると経済的には助かることになるんじゃが……」

「おじいさん、恐らくそうはなりません」

「どういう事じゃ?」

「成長速度が約4倍といいましたが、

 どうやら代謝も恐らく4倍になっているのではないでしょうか?

 それが証拠に、桃太郎は食事の間隔が短く何度も食べるのです。

 また、オムツ消費量に関して今までのデータを急ぎ調べた所、

 これまた通常の赤ん坊の消費量の約4倍になっていました」

「つまり経済的には何も変わらないということか!」

「いいえ、変わらない所か、より経済を圧迫します」

「どういうことじゃ?」

「一般的には3歳までにかかる養育費は約250万円と言われています。

 年単位ですとおよそ83万円。とはいえ、実際は国からの補助金や給付金、

 はたまた親族や友人の補助などがある事も多く、

 もっと少ない養育費になる場合も往々にしてあるのですが。

 逆に言えば、年間83万円を養育費にあてる分の稼ぎがあれば

 問題ないということです。

 しかし、桃太郎の場合は4倍の速度で成長する為、

 約3ヶ月で83万円の養育費を当てなければならない計算になります!」

「た、確かに!?」

衝撃的な養育費問題に直面したおじいさんとおばあさん。
しかし、おじいさんの資産を用いる事でこの局面を打開するのであった。

めでたしめでたし…

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