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〜ここにはないもの〜 #7



お風呂に入っていると…

がちゃ、と洗面所のドアが開く音が聞こえた


さくら:〇〇くーん

〇〇:んー?

さくら:ご飯できたよー!

〇〇:ありがとう!いまいくー

さくら:ねぇ…

〇〇:うん?どうした?

さくら:あのね…

〇〇:うん…。

さくら:お父さんの話を聞いてあげてほしい…

〇〇:親父の話?

さくら:たぶん…まだ…その…

風呂場の半透明のドア越しに写るさくらは一生懸命に言葉を選んでいた
何が言いたいのか…なんとなくわかった



〇〇:そうだよなぁ…

さくら:え?

〇〇:そうした方が良いよなぁって分かってはいるんだけど…

さくら:うん

〇〇:少し考えさせて…

さくら:うん、ごめんね

〇〇:いやいや、ありがとう。

さくら: 私も…〇〇くんが困ってるのに、気付けなかったから…(ボソッ)

〇〇:うん?なにかいった?

さくら:う、ううん。なんでもない…


ドア越しのさくらはしばらくじっとしていた
きっと僕に話すの緊張していたんだと思う


さくら: ……

〇〇:えっと…さくら、、、

さくら:え、、、なに?

〇〇:お風呂から出たいんだけど…笑

さくら:あ、ご、ごめんなさい///

〇〇:ま、まぁ別に裸見たいなら良いけど笑

さくら:え、ううん、あの、違うの!!

さくら:えっと…あ、ちがうの!見たくないってわけじゃないよ…あの…はうぅぅ///


慌てて出ていくさくら
顔が見えなくても真っ赤になっていたのは容易に想像がついた

同棲してそこそこたつけど、さくらのそういう所はいまだに変わらない 笑



〜ここにはないもの〜 #7



??:ごちそうさま…

あやめ:もういいの?

??:うん

親父が誰よりも早く食べ終わり、立ち上がって食器を台所へと持っていく


あやめ:シンクに置いといてくれれば、あとで私がまとめて洗うよー

親父:ありがとう。


親父はあやめにお礼を言って居間から出て行った


〇〇:ここ最近はこんな感じなの?

あやめ:え?

〇〇:親父のこと、いつもご飯残してるの?

あやめ:うん…全然食べなくなった…。

〇〇:そうか

僕らより早く食べ終わった理由は単純で、残すようになったからである


あやめ:だから…お父さんが好きなおかずにしてるんだけど…

つみれ
ポテトサラダ
味噌汁

テーブルには僕でも知っている親父が好きな食べ物が並んでいた


あやめ:このままじゃ、お父さんも…

さくら:あやめちゃん…

〇〇: ……

下を向くあやめ
ポタっポタっと雫がたれている

僕はそれを見てようやく気付いた

変わらず元気だと思っていた親父とあやめは、僕と同じようにただ…強がっていただけだと…

そしてさくらはそれに気付いていたんだ

親父の雰囲気が、
ここ最近の僕と似ていたから…



〇〇:話……くる…

さくら:え?


〇〇:親父と話をしてくる…


さくら:〇〇くん…

〇〇:あやめ…

あやめ: ……

〇〇:あやめ、お兄ちゃんがお父さんと話をしてくるから、、だから大丈夫だからね。

あやめ:うん…

〇〇:さくらはあやめとご飯食べてお風呂入って

さくら:うん。

〇〇:ありがとう。



居間を出て父の書斎へと向かう



ぎぃ…



ぎぃ…




静かになった家
その家の床の軋む音だけが鳴り響いている



ぎぃ…




〇〇:僕が生まれる前からあるもんな、この家



ぎぃ…



〇〇:母さん…親父と話をしてくるね。




仏間を通り過ぎる時、
僕は母にはなしかけていた





#8

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