彼は

彼は私の友達だった

彼は私の弟でもあった

彼は私の兄でもあった

幼い頃

彼と私は確かにそんな関係だった

彼の身体が傷つけられたなら

私の身体もきっと同じように痛む

彼が何かにすり潰されそうなら

私の心もざわつき泣きたくなる

幼い頃

私たちは確かにそんな関係だった

愛するもの

弱いものに牙を剥きたくなる気持ちは

大抵外からやってくる

彼は私に許されないことをしたんだと思う

よく覚えている

愛するものにただ傷つけられること

狂気

幼いながら

ハッキリと感じた愛憎

生きることが怖くなったのは7歳のあの日からだった


大人になって想う

なんで貴方はそうなってしまったんだろう

知っているのは

生まれた時は真っ白で綺麗だったものが

外からの手で汚れてしまったこと

どうして私たちこんな風になっちゃったのかな

時が経って想う

貴方の悲しみを私は分からないし

今知ることもない

知りたいとさりとて思わないし

近くで見守ろうとも思わない

それでも思い出すことが度々あるのは

私が貴方の友達だった日々

私は友達であり

姉であった

そして妹でもある

そんな日々を思い出して

少しだけ泣いた


貴方がいま

苦しいのも

かなしいのも

わかる

私も少しだけ

泣きたくなるよ


どうして私たち

こんな風になっちゃったのかな

どうして私たち

あのままではいられなかったのかな



どうして貴方は

そんな風なんだろう


あんなことが起きなければ

と、もしもの暖かい未来を思う度に

かなしくなるだけで

ほんとは誰もが救われてほしい





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