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「子ども食堂はないほうがいい」というお声について、考えを記しておきます。

久しぶりの更新となってしまいました。
冬にnoteを通じてご寄付くださった方、また7月にご寄付くださった方、誠にありがとうございました。御礼が遅くなりまして大変失礼いたしました。

さて、先日、子ども食堂について(そして政治のあり方について)ちょっとTweetをしたところ、多くの反響をいただきました。

こちらのTweetは、運営に携わる無料塾や子ども食堂を代表しての意見ではなく、個人として投稿させて頂いたものとなります。
共感、賛同してくださった方も多くいらっしゃれば、ご批判の声もあり、日々無料塾や子ども食堂に携わる身として大変参考になりました。

今回noteに書いておきたいのは、このTweetに関して、賛同してくださる方の中に「子ども食堂なんてなくなったほうがいいのに」「子ども食堂がある世の中がおかしい」といったご意見があったので、そのことについてです。

実は、私は「子ども食堂がないほうがいい」とは考えていません。

それは、私が子ども食堂を「低所得世帯で食事に困っている子どものためだけの食堂」というふうには考えていないからです。

保護者の方が忙しく、夕食をひとりで食べている子ども。家に居場所がないと感じている子ども。学校や家以外に、自分が心地良いと思える場所が必要な子ども。そんな子どもたちだけでなく、毎日仕事や家事育児に追われて疲れ果てている親御さん。日頃お仕事などで忙しくて、子育てなどの相談ができる相手が地域にいない親御さん。そんなご家族にも、気持ちが追い詰められてしまう前に、ぜひ使って頂きたいと思うのです。
さらに、私が携わっている子ども食堂では、会場が地域の高齢者会館ということもあり、日頃ひとりでお食事をされている高齢者の方々にも利用して頂いています(コロナ禍ではお弁当配布となり、そうもいかなくなってきていますが)。

子ども食堂という名前のもとに、子どもが一人でも気軽に来られるだけでなく、地域のさまざまな人たちが交流し、困ったときに「あの人に相談してみよう」という人脈をつくったり、ちょっと息抜きをしてもらったりできる場所ができたらいいなと思うのです。
その中で、「あの人、もしかしたら子育てで追い詰められているのかも?」と互いに思いやるような関係が生まれるかもしれません。

「自助、共助、公助」に順番をつけて、公助は自助や共助でやりきってからだ、という菅前首相の言葉は、私は今でも納得がいきません。
それは自助や共助は今までもしっかり機能してきており、コロナ禍においてはギリギリだった自助がもう保たなくなり、共助もさらにパワーアップしたものの、それでも足りない現状になっている……そんな折の発言だったこともあります。

ただ、公助の発動によって子ども食堂(共助)がなくなればいい、とは思わないのです。子ども食堂のようなしくみは、地域の共助でしか成り立たない部分が大きいからです。
そして、共助が不要のものになってしまえば、他者を思いやるような世の中の空気というものがどんどん失われてしまうようにも感じます。共助を遠ざけるような社会は、自己責任論を助長させ、困窮した人はさらに追い込まれていくことになります。

ですので、「子ども食堂なんてなくなればいい」というのは、少し具体的に考えてみるとちょっと違いますよ、というのをここに書いておきたいと思いました。

とはいえ、多くの方のイメージどおりの子ども食堂、つまり「困窮家庭のための子ども食堂」については、なくなっていくのが望ましいとは思います。
子ども食堂は食べ物に困っている子どものためだけの食堂ではなくなるのが理想なのですが、現状はそうなっていません。
コロナが始まって以降、需要はどんどん高まっていて、私が携わる子ども食堂でも、アンケートをとると「給食がない夏休みが苦しい」「食品の値上がりで、しっかりした食事がとれなくなった」という声が多く聞かれるようになりました。
数量限定でお弁当配布をしていますが、この数を大きく上回るお申し込みが届くようになっています。
どうしたらこのようなご家庭に少しでもラクになってもらえるか、運営者は常に頭を悩ませています。
このことに関しては、困窮する家庭を、公助によって何とか立て直してほしいのです。
公助が不十分なために、子ども食堂に困窮した家庭が殺到するような状況がずっと続くのは、違うと思うのです。

そういう意味では、「子ども食堂はないほうがいい」というご意見も至極真っ当と思います。多くの方は、この意味で言っておられたはずです。
今回は、そのうえで、「子ども食堂は、ある意味ではあったほうがいい」ということをお伝えしたく、noteを久しぶりに開きました……。

追記です。
以前も児童虐待のことなどをnoteに書いたことがありますが、こうした問題を抱える多くの家庭が、地域の中で他者とつながれるような環境になく、孤立し、精神的に追い詰められて状況を悪化させています。この国全体に広がっている「自己責任論」も、状況悪化の一因となっています。
こうした空気を変えるためにも、健全な共助を広めていくことは大切だと思います。
子どもに関することだけでなくてもかまいません、ちょっとだけでも、他人の幸せに結びつくような行動を多くの人が積極的にとれるようになっていったらいいなと願います。それはめぐりめぐって、自分の幸せや、行きづらさの軽減にもつながっていくはずですから。


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大西桃子(ライター・無料塾代表)
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