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祇園祭の「鉾建て」を、時間を忘れて見入ってしまう

 祇園祭が好きです。
 学生時代に、初めて山鉾巡行を見に来た時には、「雅さ」と「荘厳さ」に圧倒されて感激してしまいました。
ところが、その時は、祇園祭というと、その山鉾巡行のことをいうのだと勘違いしていました。
 
祇園祭は、7月の1日から始まります。1日は長刀鉾町のお千度という、その年の神様のお使いであるお稚児さんが八坂神社に神事の無事を祈って参拝する行事があります。それから5日の稚児舞披露、5日の綾傘鉾のお稚児さんの参拝・・・そして、17日の前祭と24日の後祭の山鉾巡行と、一か月間も祭の行事が続くことを知ったのは、少し後のことでした。
 
 その中でも、もっとも好きなのが、「鉾建て」です。
動く美術館とも呼ばれる山や鉾を組み立てる作業のことです。
そして、これも神事の一つ。
四条通りの一部車線が交通規制され、7月10日には一番で長刀鉾の「鉾建て」が始まります。
 
拙著「京都祇園もも吉庵のあまから帖」シリーズの第4巻では、この「鉾建て」について、こんな説明をしています。
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祇園祭のメインイベントといえば、山鉾巡行だ。前祭、後祭に分かれて、山と鉾が市内を曳かれて巡る。その山鉾を組み立てるのも、祇園祭の大切な行事の一つなのだ。その組み立てを担うのが、「作事方」と呼ばれる職人たちである。さらに細かく、携わる部分について担当する仕事が分かれている。
手伝方、大工方、車方……。例えば「車方」は、文字通り、車輪を取り付けることだけを行う専門の職人だ。
もう二時間以上にもなるだろうか。富夫は、見惚れていた。「手伝方」の職人が、一本の釘も使わず、縄だけで木の部材を組み上げていく。それを「縄絡み」という。
 
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そうなのです。
釘を一本も使わず、木組みと縄だけで組み立てて行くのは、伝統の技です。コロナ禍で祇園祭が中止になった際、一番に懸念されたのが「技の伝承」でした。
 
そういえば、祇園甲部の舞妓さんからお聞きしました。
15歳で仕込みさん(舞妓さんになる修行中)になり、16歳で舞妓になったものの、いきなりコロナ禍に襲われて、楽しみにしていた4月の「都をどり」が中止になってしまった。翌年も、また中止。ようやく、18歳になる歳に「都をどり」に出演できると喜んでいたけれど、困ったことが・・・。
舞妓になって、3年目ということは、2つ年下の後輩の舞妓がいるということ。
本当なら、「お姉さん」として、いろいろ教えてあげなければいけないのに、自分も舞台に上がるのは初めて。
下の子たちに、伝えられるものがないというのです。
 
文化というのは、ただ書物に書いてあるものを読むだけでは済まない。
口から口へ、姿を背中を見せることでしか伝えられないことがあるのです。
 
さて、
この「鉾建て」は、ちょうど梅雨が明けるか、明けないかという時期にあたります。
猛烈に蒸し暑い。
鉾組んでいる人たちはもちろん、それを見ている人たちも、汗でぐっしょりになります。
 
そんな様子を一句。
 
見る人も 鉾組む人も 汗伝う
           志賀内

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