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登ること1時間の『限定』アイス

 

 めったに冷たい物を口にしません。

 お腹が弱いからです。

 漢方と鍼灸の治療院の先生から、いつも言われています。

 「夏でも、温かい物を飲みなさい」

と。

 だから、ビールなんてめっそうもない。

 アイスクリームもシャーベットもかき氷も口にしません。

 どうしても我慢できなくなって、ビールをグビグビッ・・・ということもあります。

 「あ~幸せ~」

と思ったのも束の間。やっぱりというか、お腹がゴロゴロしてしまうのです。

 

 さて、「京都もも吉庵のあまから帖」シリーズ第6巻の構想で悩み、近づく締め切りにジリジリと焦り始めていた2022年の夏のことでした。

取材に訪れたのは、伏見稲荷大社。

「お稲荷さん」と親しみを込めて呼ばれている商売繁盛の神様です。

その背後にそびえる稲荷山の頂上を目指しての「お山巡り」をすると、その途中に、御利益のあるいくつもの神社や社が点在しています。

小説に登場させたいと考えていた目的の「おせき社」は、その中腹にあります。

 

急こう配ではないので老若男女、誰でもハイキング気分で登れる山だと聞い

ていました。健脚で二時間、ゆっくりと休憩しながらでも三、四時間で一周することができるというので出掛けたのです。

 ゆるゆると何度も立ち止まりながら登っていたにも関わらず、途中で息切れがしてしまいました。

 滝のように流れる汗。

 休憩しても、弾む息が戻りません。

 心臓がバクバク。

眼がボーッとします。

 え?・・・これって、ひょっとして熱中症?

 さっき、休憩したばかりでしたが、目の前の茶屋「三徳亭」さんに倒れ込むようにして入りました。

 そこで目に飛び込んで来たのが、

 「抹茶最中アイス」!

 の看板でした。

 麓の大谷茶園さんが作っている「限定」最中。

「ここでしか食べられない」と言われると弱い。

 

冷たい食べ物は厳禁です。

でも、今は身体を冷すことが第一。

「そうだ!身体のためなんだ」

と、言い訳をして注文しました。

冷た~い!

美味し~い!!

「限定」という言葉に、めっぽう弱いのです。

 

翌朝、心配していましたが、お腹の具合は悪くなりませんでした。

間違いなく、お稲荷さんのご加護によるものだと信じます。

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