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『ガールズバンドクライ』:第11話から見えたこの先の展開

感動の第11話、よき。いや、そうではない。私は全12話構成だと思っていたのだが、全部で13話まであるというじゃぁないか。となると、いろいろと11話で決着がつきすぎで逆に疑問がある。つまり、この物語でリンゴはどこに落ちていたのか?という疑問だ。


リアルとフィクションの間で

下記のエントリーで、アニメの登場人物は自身にとってのリアルな世界で生きているので、その物語はフィクションであってフィクションではないと自説を述べた。

例えば、本作の主人公・仁菜は熊本出身という設定だ。熊本出身者の頑固さを「肥後もっこす」と表現する。振り返ってみると、この言葉は少なくとも第1話の桃香のセリフ、第7話のすばるのセリフに登場しており、重要な設定であることがうかがえる。

作中の仁菜は「肥後もっこす」としての言動(これは「正論モンスター」などと評されている)を繰り返していく。それが彼女にとってのリアルだからだ。
一方でフィクションとしてみれば、これはあくまで物語の制作者が狙いを持って設定した特徴の1つであり、その狙いは例えば第10話で父親(こちらも肥後もっこすの頑固者)との和解を通じた仁菜の成長を描くことであった。

そう考えると、第11話のいろいろ決着つきすぎな展開には制作者の狙いが隠されていると考えたくなる。それは何だろう? 推測のヒントは『ガールズバンドクライ』は「金の羊毛」ジャンルの作品だという点だ。

「道端のリンゴ(Road Apple)」について

『SAVE THE CATの法則』(ブレイク・スナイダー著)によると、「金の羊毛」ジャンルの作品の特徴は、

  • 主人公は何か(例えば、王になるために必要な「金の羊毛」)を求めて旅に出る

  • 旅の中で主人公は様々な人に出会い、様々な経験をする

  • 何かを求めた旅で、主人公が真に得るのは自分自身の成長

となる。
そして、金の羊毛ジャンルの作品に欠かせない要素としてしばしば登場するのが「道端のリンゴ(Road Apple)」だ。同書によるとこれは、

  • 物語で勝利が見えてきた頃にプランを阻止し、障害となるもの

  • 例えば、映画「プライベート・ライアン」で、求めていた人物を救出したのに、当人にそれを拒否される状況などが該当する

とされている。

例えば、『ガールズバンドクライ』と同じガールズバンド物、かつ金の羊毛ジャンルの作品(だと思う)に『ぼっち・ざ・ろっく!』がある。そして、『ぼっち・ざ・ろっく!』で道端のリンゴに該当するのは台風による大雨だ。

オーディション突破後の初ライブ、チケットも順調に売れたし、意気込みを見せていたメンバーだったが、台風による大雨で家族や友人が来られなくなる。まだバンドの知名度が低く、少ない観客のほとんどが結束バンドには期待していない。バンドの成功を目指して活動してきたメンバーたちのプランがまさに阻止されようとしている状況だ。

アニメシーズン1・第8話より

しかし、そんな苦境だからこそ主人公・後藤ひとりはギターヒーローの真価を発揮する。そして、メンバーの伊地知虹夏がその事実に気づく。ここは本作屈指の名場面だが、道端のリンゴというアクセントがあるによって、

  • 観客は少なかったけどライブは成功だったね、で終わるのではなく

  • あの日偶然出会ったギタリストは、私の夢をかなえてくれる運命の仲間だった!

という劇的展開になりえるのだ。

アニメシーズン1・第8話より

そう考えたとき、『ガールズバンドクライ』の道端のリンゴはどこにあっただろうか?
振り返ってみると、彼女たちのバンド活動は意外なほど順風満帆だ。

  • 経緯不明ながらドラマーがあっさり加入

  • 何度かのライブを順調にこなす

  • 欲しかったベースとキーボードは相手から勧誘してきた

  • しかも、二人は初めて入った牛丼屋の店員で顔見知りだった

といった具合であり、あえて挙げればドラマーが身内からバンド活動を容認されてない程度。この物語で道端のリンゴはまだ登場していないと考えると考えるのが妥当だろう。

残り2話の展開は?

あまりにも色々なことに決着がつき過ぎた第11話の展開と、残された2話分の物語の時間を考えると、『ガールズバンドクライ』に今から道端のリンゴが登場することは十分にあり得る。それは何だろう? そのとき阻止される状況に陥るのは何だろうか?

気になるのはフェスで様子がおかしかった芸能事務所のスカウト(三浦さん)だ。フェスまでの間に今後の展開を左右する何かがあったに違いない。それはバンドメンバーと素直に顔を合わせることが出来ないほどの重大事件だったはず。それが本作での道端のリンゴだ。

アニメ・第11話より

それが何でどんな展開が待っているのか今は知る由もないが、おそらくはバンドのメジャーデビューに関する何かだろう。大きな障害を前に、バンドメンバーは大いに葛藤する。メンバー間の意見の対立が再度描かれることになるかもしれない。

それでもなお、バンドメンバーたちの未来に明るい希望が持てる、幸せな展開で物語が終幕することを心から願っている。残り2話の展開が気になって仕方がない。


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