『リコリス・リコイル』:千束のキャラ設定と物語考察の答え合わせ
個人的に今年(2024年)になって視聴した本作、よくできた作品なのでその分だけ「ここがもっとこうだったら」と、ついアレコレ言いたくなってしまう。そんな個人的な感想・考察に関する答え合わせの情報を見つけたので紹介しつつ、それらと主人公・千束のキャラ設定との関係を取り上げたい。
ギャップのあるキャラ設定
物語で印象的なキャラクターを設定する定番手法に、見た目や表向きの特徴とは異なるギャップを持たせるテクニックがある。下記エントリーで紹介したように、千束もたきなも、かわいい顔して「実は冷酷な殺し屋」であることが何よりのギャップなのだが、これは『シティーハンター』の影響だそうだ。
となると、「喫茶リコリコ」は『シティーハンター』に登場する「喫茶キャッツアイ」の影響を免れないだろうし、さかのぼれば本家本元『キャッツ・アイ』の「喫茶キャッツアイ」にたどり着く。
スーパー戦隊シリーズなどでも、主人公とその周辺の人物が喫茶店に集う、または拠点としている設定はよく見られる印象だが、その源流は『キャッツ・アイ』なのかもしれなず、『リコリコ』もその流れを受け継いだ作品と言えそうだ。
凄腕過ぎるスーパーハカー
これも以前述べたが、『リコリス・リコイル』に登場する「ウォールナット」「ロボ太」はあまりにも凄腕のスーパーハカー(この表現、こだわって使ってます)過ぎて作品を壊している感が多少あるのだが、これについては原作担当が、
と正直に裏話を暴露している。凄腕のハッカーは様々な作品に登場し、多様な描かれ方をしているが、ウォールナットの能力は(ロボ太も)現実離れしすぎだ。(といっても現実がどんなだか、よー知らんけど)
フィクションならどこまでも嘘を重ねてよいわけではなく、視聴者が作品に没頭できる適切なバランス感があるはずだ。脚本でもっと頑張れと言いたい。新作では改善を期待したい。
やっぱり、悪役の描写に難が
ここが個人的には一番モノ申したい箇所であり、おそらく視聴者の意見が大きく分かれるところでもあり、制作陣がこだわりを持って表現した部分だと思うのが悪役・真島の設定だ。
下記に書いた通り、悪役は徹底的に悪であることがストーリーテリングの原則だし、その方が悪役と決着をつけたときの爽快感が増すと個人的には思う。私がみるところでは『リコリコ』のジャンルは「スーパーヒーロー」なのでなおさらだ。
もちろん、制作陣が作品を通じて何を表現したいかによって、悪役にも様々な表現方法がある。そうしたオリジナリティ創出の努力が作品の魅力を一層向上させることもあるだろう。現に『リコリコ』の制作陣はそう考えたようだ。主な箇所をインタビュー記事から引用すると、
だそうだ。制作陣があえて真島をあのように設定したことが分かって、個人的にはすっきりした。ただし、新作では別の悪役を出して欲しいことには変わりない。
千束のキャラ設定について
上述した悪役の描き方は、実は千束のキャラ設定との対比ではないかと思えてきた。最近になってようやく気付いたのは、本作で千束は「フラットなアーク」のキャラクターとして描かれていることだ。
この詳細は別のエントリーで取り上げる予定だが『リコリコ』の主要な登場人物は歪んだ価値観、狂った価値観の持ち主だらけだ。
犯罪者を問答無用で抹殺するDAとリコリス
真島とテロリストたち
殺しの才能ですら支援して伸ばすという吉松とアラン機関
安易に犯罪に加担するスーパーハカー(ウォールナット、ロボ太)
誰も彼もが世間一般とはかけ離れた価値観を持って行動している。
こうした中にあって、「いのち大事に」を主張する千束だけが主要人物で一人だけ異なった価値観を持っている。そんな千束だからこそ、相棒のたきなはもちろん、悪役の真島まで千束に感化されて物語中で大きな人物的変化を見せるのだ。(真島が千束の茶飲み友達になってしまったことは以前も取り上げた通りだ)
以上、これまでに投稿したエントリー内容と『リコリス・リコイル』制作関係者のインタビューを照らし合わせて紹介した。
さて、そろそろ新作の追加情報が欲しいところですね。
※続きはこちら
追記:
本作のED曲『花の塔』を担当していたさユりさんが亡くなられたと知りました。毎回各話の内容を深い余韻と共に味わうことができたのは、この曲の絶妙な完成度のおかげだったと思います。ご冥福をお祈りします。
元のインタビュー記事
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