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2024年3月の記事一覧

黒 『夜露がたり』(砂原浩太朗)が凄い

表紙と装丁の元となっているのは広重の「両国花火」。 でも花火も屋形船も切り落とされている。 ただ黒洞々たる夜の橋があるばかりだ。 と、羅生門の最後の一行なぞもじりたくなったのは、その内容故かもしれない。 手にするとずっしりと重く感じるのは、 タイトルと帯に書かれた宣伝文の力もきっとある。 『夜露がたり』(砂原浩太朗・新潮社) 目次をみると全8篇、 それぞれのタイトルからも滲みが漏れ、否が応でも期待は膨らむ。 「帰ってきた」「向こうがわ」「死んでくれ」「さざなみ」 「錆び刀」「

芝居小屋と人 『木挽町のあだ討ち』

自分で自分の書いたものを改めて引用するなんて全然よくない。 でもふとそうしたくなったのは、 読み終えたとある1冊が、ほんとうによかったからだ。 読みながら何度もぐっときて、じぃんとして、 読み終えて、そうしたくなったからだ。 直木賞受賞作だし、人気作だし、 尊敬する劇作家たちも薦めていたから気になってはいた。 にもかかわらず、手に取るのが遅くなったのはすごくしょうもない理由だ。 「もう時代小説はええかなあ」 うんと若い頃一時期、ずっと時代小説を読んでいた。 心はずっと江戸

私は最強 吉川トリコ描くギャル語の『マリー・アントワネットの日記』

古典と世界史の授業が好きだった。 いい先生に巡り合えたからというのも大きい。 伊勢物語「あずさ弓」の現代語訳という宿題を びゃーっと書いて提出したところ、 年配の色っぽい先生が笑ってくれた。 卒業するまでずぅーっと言われた。 「『桃尻語訳 伊勢物語』のmomoさんね。うふふ」 今思うと橋本治というより田辺聖子気取り、というか、読んでいたから書いた書けたのだろうと思う。 でも、たくさんの真面目な回答の中、いきなり出てきたあんな訳を読まされたらそりゃびびるやろうな。 「江

本屋・桃花舞台のこと 東京・湯島のBookstore&Gallery「出発点」への誘い

箱(棚)貸書店コーナーの一部をシェアさせていただいている 東京・湯島のBookstore&Gallery「出発点」店長であり、 出版社「旅と思索社」代表によるご挨拶がHPにアップされています。 よろしければお読みいただき、 記載の営業時間&定休日をご確認の上、 是非、「本屋・桃花舞台」も含む、 素敵な箱主さんの本屋や、御店主セレクトの本、 いろんな作家さんによる雑貨などに出会いに遊びに来ていただければ嬉しいです。 これまで来て下さった方お買い上げいただいた方、本当に嬉しいで