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2023年9月の記事一覧

熱と氷と人とナカミ 私的・川上未映子論

バケツに入った氷水を頭からかぶる。 次に氷水をかぶる人を指名する。 指名された人は24時間以内にチャレンジする。 チャレンジしたくない場合は100ドル寄付する。 チャレンジ後に寄付をしてもいい。 すべてはSNSへ投稿され、リレー方式で繋がってゆく。 9年前の夏前から夏に流行ったいわゆる「アイス・バケツ・チャレンジ」。 アメリカで始まったそれはチャリティー活動、 筋萎縮性側索硬化症 (ALS)の支援拡大を目的としたものだった。 世界でも日本でも芸能人や著名人(某企業とか)が参加

そのタイトルに 『教誨』

ひとりだと、ひとり。でもそれが群れや集団となると、別だ。 集団は、時にとてもこわい。 〝個人のはっきりした言葉や意見よりも集団としての和〟 〝集団の中で波風を立たせずに生きることが美徳〟 〝空気を読め〟 そうして集団で「YES」となったことは時に絶対的に間違ったことであっても「YES」となることがある。 そうさせられてきたり、そうすることそのことを疑いもしなかったり、 いや、そうしないと排除されたりするから黙ること。 そんな暴走や暴力や沈黙が他者の尊厳や命さえ直接的にも間接的

青い糸

「人生にはいろいろある。でもなんとかなるし、生きていたら、いつか許すこともできる」 「それでも、その生活のあり方の延長線上に、私たちが周りの人にどんなに心を砕いてもどうにもならない地平が、政治によって権力によって現れてしまうのだ、ということを書きたいと思いました」 Yahoo!ニュース本屋大賞2021ノンフィクション本大賞の受賞作、 『海をあげる』の著者・上間陽子さんによる記念スピーチからの抜粋です。 昨日、この本の担当者である筑摩書房の編集者がTwitterにページ

場所と人々と彼女と、「ごちそうさま」 『今日もレストランの灯りに』

これまで知らなかった場所(世界)に ひょんなことから入り関わる事で見えてきた人間模様の泣き笑いを 著者自身の目と筆で書いたあったかくて人情味のあるエッセイ。 そんな読みものはたくさんありすぎるかもしれないこの世の中に。 でもそれらが読まれ、わたしもどれも読みたいと思うのは、 「実際に」「その場へ」そのひとが「中で」「関わる事で」ということと 「他でもないそのひとの「目」」だからだと思う。 尊敬するライターさんがSNSで紹介していたことで手に取った本作は、 読売新聞医療サイ