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街は劇場

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日々すれ違う名も知らぬ皆にツッコんだりグッときたり
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#街は劇場

黒魔術とスーパースター つまりは職人の仕事について

好きな店がまた出来た。 全然気取っていない。でも安物臭さは一切ない。 「ちゃんと」している。でも「どや」な顔はしてない。 パン屋さんかつお惣菜屋さんなのだが、 ランチタイムにはちょっとしたフレンチもいただけるらしい。 フレンチの職人からの独立して店をひらいたという経歴を知って納得。 わたしは相変わらずあほのひとつ覚えであのサンドイッチを食べるけど。 ひさびさに行った行けたランチ時に、事件は起きた。 その客が入って来た時から嫌な感じはした。 ええとこのええもん食べ慣れておら

ビタミン 花と言葉の力

お世話になっている方のお祝いにフラワーアレンジメントを買った。 なんてことのない店で買ったのだが会計をしてくれた女子は感じがよかった。 花を整えラッピングしてくれた初老の男性は渡してくれながら言った。 「ありがとう。いってらっしゃい」 歩き出してからも耳に胸に残った。 その一言が。 コンビニで海外の方? でも日本語の流暢な方が、言っていた。 会話の内容は聞いていないが、 店員さんがなにかを間違い、 それ咎めるのではないが、和ますために言ったような一言だったみたい。

十八番 「それイマイチやわ。キモいわー」な路上ミュージシャンと

普段なら素通りだ。 でも足をとめた。 鶴橋駅のあのガード下の雰囲気のせいかな。 芸や生きることをぼんやり考えながらの嬉しい帰り道の日だったからかな。 スタンドマイクの下にさっきまで呑んでおられたのであろうロング缶が数本並んでいたのを見たからかもしれない。 「なにが人気? 得意ですか?」 「お! いいですか!?」 歌い出し歌い上げてくれたのは尾崎豊の『Forget-me-not』だった。 ちゃんと聴いた。 聴き終わり、口から出た、出した。 「それイマイチやわ。キモ

雪女 バス停で会ったあの人はきっと間違いなく

「寒いな」 地方のバス停のベンチで さっきからちらちらとこちらを見ていた年配の女性が言った。 目を合わすと、待っていたかのように声をかけてきた。 「寒いですね」 「なあ」 夏木マリに更にプラス10歳くらい歳を重ねて 前傾姿勢にしたようなそのひとは、まだ話したそうな様子、話してくる。 バスはまだまだ来ない。 「あと6分くらいあるで」 「ほんまに。寒いですね」 かくして話す。 「雨、降らへんからまだましやな」 「あ、降らへんねや。ちょっと空あやしいです

駄菓子 仕事中の逃亡とクソガキ

仕事中に逃亡した。 近所のコンビニにである。 さっきのことだが毎回のことだ。 ちょっと行き詰まったり、 というと大ごとのようだが全くもってそうではない。 書いててスッと言葉出てけぇへんなー、 これちょっとなんか体からスッと出てへん感じやなー、 そのままごまかして書いてもええねんけど、 そうすることも少なくはないんやけど (そうせなあかんことや仕事も残念ながら少なくはないねんけど) それはそれがなんか嫌やなーそれは、みたいな時は、 歩いたり、 コンビニという雑多な場所でいろいろ

新 葉隠

駅のホームを歩いていたら斬られた。 正確に言うと違う。 斬られてない。 目の前に木刀が振り下ろされたから「はっ」となった。 一瞬のことだった。 「!」 ぼぉっとしながら歩いていたから 突然目に入った切っ先に思わず刀の方を見ると まず刀の主ではないお連れさんがびっくり顔で「Wow」って言って 刀の主は「Oh」って正気になった。 わたしは笑ってお連れさんの方に「うんうん大丈夫」っていうジェスチャーをして皆笑って別れたのだけれど、やっぱり危ない。 お土産屋さんとかも注意

駅と日々 楽しかったこの2日間の内容ではなくそのまわりのこと

「いいの?」 「全然!次で降りるから! どうぞ!(笑)」 「じゃあ次まで座ってよ! ね?」 「全然! 全然だいじょーぶやから! どうぞどうぞ」 昨日夕方、ご婦人2人に席を譲って、スマートに格好良く言ったつもり。 一緒にふふふと笑い合う。 でも言ってから気付いたわたしが降りるのは次の次の駅だった。 降りないわたしを「え? ごめんね? 」みたいにちらちらと見て下さる。 「あ、すみません、次の次やった(笑)」 また気付いた。ちゃうやん次の次の次やんぼけてるわわし。 また見て下さる。

猫 あの日歌ってた男と聴いてた女の子たちへ

すこし前に流行った「君は猫になって去った」みたいな歌を、霜月後半とある夜とある駅前広場で若い男がギターを弾きながら歌っていた。 イラッとした。 でもあの歌のなんかなんちゅうか雰囲気なんだろうか。 いや、寒さの中のあのメロディーあの歌詞、 しかも無名の若者が一生懸命に歌っているという状況ゆえか。 状況とエモさが重なり誰かの気持ちと共鳴するん? べたっと座り込んだ何人かの女子が一生懸命に聴いていた。 彼女らが猫が好きなのか今歌っている目の前の歌い手の顔が好きなのかは知ら

パレード

「無事でしたか」 「無事来れました。封鎖とかされてましたけど(笑)」 「でしょ? 朝からっすよ」 「しかしこの日に来るかね、って感じですよねわたし?!」 「確かに(笑)」 「今日しか来れる日なくて。知らなかったんですよ今日って。 昨日テレビのニュースで知った(笑)」 「今日っすよ。まさに今からっす。ちょうど。めっちゃ今からっす(笑)」 阪神優勝パレードの日のヘアサロンでの会話です。 店は大阪・心斎橋にあります。 御堂筋沿いではないんやが、一本逸れただけのところの二階に。

数日前の帰路にて。 近所のスナックから酔ったおっちゃんの歌う『島人ぬ宝』が聴こえてきた。 「それがしまんちゅぬたァーからー」 思わず口から出たっていうか言うてもうた「へたくそー!」 笑いながら帰った。 あいつはきっとちょっと前に宇崎竜童の『身も心も』を歌っていたおっちゃんだ。 めっちゃ気持ちよさそうやな。気持ちええんやろな。酒も入ってるんやろうしな。 『身も心も』の時もへたくそで、めっっっちゃへたくそで、 でも、めっちゃ気持ちよさそうだったから笑ってしまった。

昼過ぎに歩いていたらどっかの店から CHAGE and ASKAの『YAH YAH YAH』が聴こえてきた。 爆音で。 なんでやねん。 脱力してツッコんで、でも聴いてしまった。 改めて聴くとすごくないですか。 こんな勢いだけの曲ってある? しょうもないことを考えているうちに曲は盛り上がり盛り上がり 遂にあのサビに来る。 「ヤーヤヤーヤ!」 なんやねん。 すごい。すごすぎる。 陽キャとか応援ソングとかの域をもう越えている。 敢えて言うなら戦隊もののヒーローショー

正解とバニラアイス 正解の話をしませんか

今日は正解の話をしましょう。 仕事の合間に「アイス食べたいなあ」と近所のコンビニに行って冷凍ケースを覗いていたら後ろから声がした。 「あ、これ買お」 振り向いたら知らんおっちゃんが同じく覗き込んでいた。 おっちゃんはスーパーカップバニラ味をケースから取り出して言った。 「正解でしょ?」 え。何。わたしに言った? なんて返したらええ? 口は勝手に言うていた。 「正解です絶対!」 「やろ~!?」 おっちゃんは満足そうにレジに向かって行った。 じわじわきた&きている。 正解っ

Tシャツ百景

ちょいと前の話なのだが 仕事関係の人に誘われた焼肉屋にプロレスTシャツで行った。 背中で血まみれの選手が笑っているという、あまり外では着られへんやつ。 かといって観戦中に着ている訳でもない。 そもそも最近はあまり会場にも行っていないし、一番好きな選手とかでもない、嫌いじゃないけど。 デザインがいいなあというのと、仕事中に己のテンションを上げるために買うたやつ。 店には、偶然、格闘技のポスターがたくさん貼られていて、案の定ママさんが声をかけてきた。 「おねえさんのそれ、●●で

Laundry

コインランドリーって駅みたい。 誰かが来て、去って、すれちがって、また来て、去って。 また会えるかもしれないけれど会えないことも(のほうが?)多かったりもして。 特に会話を交わすわけでもないけれど、ひとりのときもあるけれど、誰かに会って。 なんか駅みたいやなあ、って思うのです。 最近よく行くようになった。 きっかけは出先で使って便利やったことや 近所でもおおきいものとか洗ったり乾燥したり特にこの雨の季節はありがたい。 もあるのだけれど、それと同時に、いや、それよりもかもし