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街は劇場

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日々すれ違う名も知らぬ皆にツッコんだりグッときたり
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#街角スナップ

猫 あの日歌ってた男と聴いてた女の子たちへ

すこし前に流行った「君は猫になって去った」みたいな歌を、霜月後半とある夜とある駅前広場で若い男がギターを弾きながら歌っていた。 イラッとした。 でもあの歌のなんかなんちゅうか雰囲気なんだろうか。 いや、寒さの中のあのメロディーあの歌詞、 しかも無名の若者が一生懸命に歌っているという状況ゆえか。 状況とエモさが重なり誰かの気持ちと共鳴するん? べたっと座り込んだ何人かの女子が一生懸命に聴いていた。 彼女らが猫が好きなのか今歌っている目の前の歌い手の顔が好きなのかは知ら

壁と卵

もしかしたら幻かもしれない。 毎回不思議な気持ちになる。 電車でしょっちゅう一緒になるおじさんのことだ。 おっちゃんじゃない、おじさん、という感じのする人。 紳士というと言いすぎだけれどおっちゃんじゃない、おじさん。 毎回きちんと座席に座っておられる。 文庫本をひろげていたりいなかったりする。 会ったり会わなかったりするのだがつい先日も遭った。 わたしはその人の見た目や特徴を覚えていない。 だから電車内では気付かない。 だって覚えてない。 でもしょっちゅう会っている。 降

数日前の帰路にて。 近所のスナックから酔ったおっちゃんの歌う『島人ぬ宝』が聴こえてきた。 「それがしまんちゅぬたァーからー」 思わず口から出たっていうか言うてもうた「へたくそー!」 笑いながら帰った。 あいつはきっとちょっと前に宇崎竜童の『身も心も』を歌っていたおっちゃんだ。 めっちゃ気持ちよさそうやな。気持ちええんやろな。酒も入ってるんやろうしな。 『身も心も』の時もへたくそで、めっっっちゃへたくそで、 でも、めっちゃ気持ちよさそうだったから笑ってしまった。

昼過ぎに歩いていたらどっかの店から CHAGE and ASKAの『YAH YAH YAH』が聴こえてきた。 爆音で。 なんでやねん。 脱力してツッコんで、でも聴いてしまった。 改めて聴くとすごくないですか。 こんな勢いだけの曲ってある? しょうもないことを考えているうちに曲は盛り上がり盛り上がり 遂にあのサビに来る。 「ヤーヤヤーヤ!」 なんやねん。 すごい。すごすぎる。 陽キャとか応援ソングとかの域をもう越えている。 敢えて言うなら戦隊もののヒーローショー

正解とバニラアイス 正解の話をしませんか

今日は正解の話をしましょう。 仕事の合間に「アイス食べたいなあ」と近所のコンビニに行って冷凍ケースを覗いていたら後ろから声がした。 「あ、これ買お」 振り向いたら知らんおっちゃんが同じく覗き込んでいた。 おっちゃんはスーパーカップバニラ味をケースから取り出して言った。 「正解でしょ?」 え。何。わたしに言った? なんて返したらええ? 口は勝手に言うていた。 「正解です絶対!」 「やろ~!?」 おっちゃんは満足そうにレジに向かって行った。 じわじわきた&きている。 正解っ

Tシャツ百景

ちょいと前の話なのだが 仕事関係の人に誘われた焼肉屋にプロレスTシャツで行った。 背中で血まみれの選手が笑っているという、あまり外では着られへんやつ。 かといって観戦中に着ている訳でもない。 そもそも最近はあまり会場にも行っていないし、一番好きな選手とかでもない、嫌いじゃないけど。 デザインがいいなあというのと、仕事中に己のテンションを上げるために買うたやつ。 店には、偶然、格闘技のポスターがたくさん貼られていて、案の定ママさんが声をかけてきた。 「おねえさんのそれ、●●で

骨 あなたって、あなたって

チェーンの古本屋のカウンターでお客さんが店員さんに延々話しかけていた先日。 (おっちゃん、にまでいかない、にいちゃん) どうでもいい世間話や己の話を延々と延々と買取カウンターでしていた。 わたしが売ってる間も買うてる間もレジに居て話しかけていたから短い時間ではない。 店員さんはうまく相槌を打っていた。いつものこと、いつもの人なんだろうなと思った。 なんやろね。なんなんやろね。キモいね。やさしいね。 以前スーパーで似た状況に遭遇して店員さんと目が合った話はここに書いた。 ほ

beautiful

きのうの朝の話、 電車の中で海外からの旅行客が若者に絡んでいた、でっかい声で。 旅行客はおっちゃんふたり、若者はギターケースを抱えた学生さん風。勿論、他人同士。 程よく混んだ社内で3人は立っていて、わたしは少し離れたところに立っていたのだが、おっちゃんらの声はめっちゃデカい、声もリアクションもデカい。 「cuteは?」「cuteはかわいい」「おー! かわいい! かわいい!!」 「beautifulは?」「きれい」「わー! おー! きれい!」「きれいbesutiful! おー!

ひよことフィリップ・マーロウ

朝の商店街の前に大量のひよこが、と思ったら幼稚園児たちだった。 あの黄色い帽子はいつ見てもひよこを連想させる。 狭い商店街の入口を20人弱がふさいでしまっていた。 若い元気そうな男の先生が声を張り上げる。 「ほら、お買い物の人たちの邪魔にならへんよーにー!」 わたしはちびっこがあまり好きじゃないというか得意じゃない。 頭が下がる。幼稚園の先生ってほんまたいへんそうな仕事やなあ。 お天気の日に外に出ての課外授業? そりゃひよこたちもテンションあがるよね。 わらわら楽しそうに思い

紫陽花と老人

老人は足をよろよろ引きずり歩いてきた。 立ち止まりぼきっと紫陽花の花を折った。 きのうの朝、7時過ぎ、雨の中の話です。 遅く寝たのに早く目が覚めて、 ちょっと散歩しようかと外へ出た。 しばらく歩くと、近所じゃないけど近所の幼稚園。 紫陽花がとてもきれいに咲いてる。 それも塀から〝わっ〟と乗り出すように。 なんかチビッコたちみたいに元気でいいな。 通りかかる時に思っていたのは、わたしだけじゃないみたい。 パシャリと写真におさめているひとを見かけたことも少なくない。

大阪の翁、聖者の行進

近所のジイサンが叫んでいた。 「わしの人生は清く正しく美しくや」 なんでそんな言い切るねん。 笑うのを通り越してしみじみした。 ジイサンと言うには失礼かな、 でもオッサンではないな、やっぱジイサンかな、そんな歳のひと。元気。 ちょっと面白くなって振ってみた。 「そうなんですか?!」 速攻返事が返ってきた。 「そうや! 昼にラーメン食うたら夜なんも食わんでええねん」 意味わからん。 いや、私がわかっていないだけなのかもしれない。 この人は悟りをひらいたりとかしているのかもしれな

贈り物と1秒後の世界/きっと賢者の🎁

JR大阪駅のエスカレーターにて。 2人のオバ様。 「長男の嫁の誕生日に物贈ったったんやけどうんともすんとも礼言うてこん」 「あんたそりゃ要らんのや。嫌われてるねん」 後ろに居た私は吹き出すも思わず割り込みかけた。 「そんなことありませんて。きっと嬉しいですって」 言わんかった言えんかった。 よぉ考えたらめちゃくちゃ無責任でしかないコメントでしかない。 もしかしたらほんまに要らんくて嫌われているのかもしれへんし。 いや、そんなことあれへんと思いたいけど。そもそも他人事。 てか、

マニュアルとはわかってるけど🎃✨

昼間、仕事中の気晴らしに外を歩いていたら、 スーパーの前に居たイベントスタッフのにいちゃんに声をかけられた。 「森永の新商品の牛乳のキャンペーンをやっていまして、今、無料で1本……」 早く戻らねばならないので「わー、すみません、だいじょうぶです!」とお断りしたら、 若いにいちゃんは「あ、はい~!」と断られるのにも慣れた様子で笑顔で居てくれたごめん。 で、足早に去ろうとしたのだが、彼はいきなりちょっとおっきな声で「あ!」って言った。 思わず振り返ったら言われた。 「ハッピー

『三日月』にまつわるエトセトラ

ついこのあいだの話。 近所のカラオケスナックの前を通ったら熱唱が聴こえてきた。 「がんばっているからねーって、つーよーくー-なるからねーって」 この曲、好きな人多くないですか。 中でもオッサンでこの曲好きな人って多くないですか。 絢香の『三日月』。 私的に「なんでおじさんってこの曲好きなんやろランキング」上位に入る。 統計をとった訳じゃないからあくまで「私的」やけど。 あの歌詞。あの歌い方。あの歌詞。 エモいなんて言葉もなかった2006年にリリースされ、 まさかの2022