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街は劇場

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日々すれ違う名も知らぬ皆にツッコんだりグッときたり
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#ショートエッセイ

俺の中の 岡部たかしと某旅芝居関係者の歌からおじさんたちの気持ちと人生を思う

最近大ブレイクのイケおじ役者岡部たかしが ラジオ番組で尾崎豊を「これが俺だ! みたいな」と語っていた。 『I LOVE YOU』を劇団オーディションで全身白スーツで真剣に歌った。 「真面目にやったんですけど、変な奴が来たと思われとったみたい」 「これも好き」という『卒業』。 「歌い出したら長いのでカラオケボックスで皆トイレ行くんですよ、熱くなってるときに」 あのとぼけた感じで真面目に言っていたから吹き出してしまった。 数日後に思い出したのは旅芝居界でヒール(悪)とされてい

フリマとポケット 仕事といい仕事

マーケットの語源はラテン語、商品や商うという意味らしい。 バザーの語源はバザールでイスラム語だったかペルシア語だったか、 市場だとか物の値段や価値が決まる場所という意味らしい。 つくったりあつめたりあつまってひとつの場所でそれらを売るというイベントはどこかしらでいつもおおきなものからちいさなものまでまあ行われているわけであなたもよく行くかもしれない。 わたしも通りがかると覗くし時折出向きもする。 そこは世界だと思う。 例えば「手作りフリマ」的なやつには かわいいものや個

ビタミン 花と言葉の力

お世話になっている方のお祝いにフラワーアレンジメントを買った。 なんてことのない店で買ったのだが会計をしてくれた女子は感じがよかった。 花を整えラッピングしてくれた初老の男性は渡してくれながら言った。 「ありがとう。いってらっしゃい」 歩き出してからも耳に胸に残った。 その一言が。 コンビニで海外の方? でも日本語の流暢な方が、言っていた。 会話の内容は聞いていないが、 店員さんがなにかを間違い、 それ咎めるのではないが、和ますために言ったような一言だったみたい。

狸の豆腐 職人、仕事、場所、気持ち

豆腐屋の話をする。 通い出したきっかけはミーハー極まりない。 某江戸戯作者の名を商品名とした豆腐などがあると知ったからだ。 若くないけれど若者が来るのが珍しいのか。 御店主に覚えられて、たまにオマケもいただく。 御店主は顔付きも手付きも「The 職人」だ。 狸的な雰囲気を感じたりもする。 悪い意味での狸じゃない。 見た目がとかでもない。 なんというか長年生きてる狸みたいな。 『平成狸合戦ぽんぽこ』の長老狸的なね。 飄々としているのだけれど、 その手や皺や顔とかが、ああ、職

十八番 「それイマイチやわ。キモいわー」な路上ミュージシャンと

普段なら素通りだ。 でも足をとめた。 鶴橋駅のあのガード下の雰囲気のせいかな。 芸や生きることをぼんやり考えながらの嬉しい帰り道の日だったからかな。 スタンドマイクの下にさっきまで呑んでおられたのであろうロング缶が数本並んでいたのを見たからかもしれない。 「なにが人気? 得意ですか?」 「お! いいですか!?」 歌い出し歌い上げてくれたのは尾崎豊の『Forget-me-not』だった。 ちゃんと聴いた。 聴き終わり、口から出た、出した。 「それイマイチやわ。キモ

龍 銭湯を探すひと

あれ、幻やったんかなあ、と今でも思う。 いや、幻やない。 何日か、いや、何日も前の話だ。 「すみません。このへんに風呂ないっすか」 コインランドリーにしばしば行く。 家に洗濯機がない訳じゃない。 洗濯が嫌いじゃないむしろ好きなわたしは、 時に手当たり次第なんでもかんでも全部まるごと洗いたくなる時がある。 着るものだけじゃなくなんでもおっきなものとかを がーっと洗ってざーっと乾かして「ぼーっ」する時間を尊く思う。 これも、数日前に書いた仕事の合間の「逃亡」の場合が多いん

その日のおにぎり 食べることは生きること

快速電車のボックス席でお弁当を食べている人を見た。 乗り込んだ瞬間目に入った。 ちょうど食べ終わったところのようで ランチクロスというか大きなハンカチというかアレでお弁当箱を包み直しているところだった。 「!」 彼とは離れた席に座ってもう一度 「?!」 電車を降りて目的地まで市バスに乗った。 途中のバス停から女子高生2人がわいわいと乗ってきた。 うちの1人はコンビニのホットドッグを齧りながらだった。 パキッとするケチャップとマスタードを追加でかけながら齧りながら喋ってた。

駄菓子 仕事中の逃亡とクソガキ

仕事中に逃亡した。 近所のコンビニにである。 さっきのことだが毎回のことだ。 ちょっと行き詰まったり、 というと大ごとのようだが全くもってそうではない。 書いててスッと言葉出てけぇへんなー、 これちょっとなんか体からスッと出てへん感じやなー、 そのままごまかして書いてもええねんけど、 そうすることも少なくはないんやけど (そうせなあかんことや仕事も残念ながら少なくはないねんけど) それはそれがなんか嫌やなーそれは、みたいな時は、 歩いたり、 コンビニという雑多な場所でいろいろ

駅と日々 楽しかったこの2日間の内容ではなくそのまわりのこと

「いいの?」 「全然!次で降りるから! どうぞ!(笑)」 「じゃあ次まで座ってよ! ね?」 「全然! 全然だいじょーぶやから! どうぞどうぞ」 昨日夕方、ご婦人2人に席を譲って、スマートに格好良く言ったつもり。 一緒にふふふと笑い合う。 でも言ってから気付いたわたしが降りるのは次の次の駅だった。 降りないわたしを「え? ごめんね? 」みたいにちらちらと見て下さる。 「あ、すみません、次の次やった(笑)」 また気付いた。ちゃうやん次の次の次やんぼけてるわわし。 また見て下さる。

猫 あの日歌ってた男と聴いてた女の子たちへ

すこし前に流行った「君は猫になって去った」みたいな歌を、霜月後半とある夜とある駅前広場で若い男がギターを弾きながら歌っていた。 イラッとした。 でもあの歌のなんかなんちゅうか雰囲気なんだろうか。 いや、寒さの中のあのメロディーあの歌詞、 しかも無名の若者が一生懸命に歌っているという状況ゆえか。 状況とエモさが重なり誰かの気持ちと共鳴するん? べたっと座り込んだ何人かの女子が一生懸命に聴いていた。 彼女らが猫が好きなのか今歌っている目の前の歌い手の顔が好きなのかは知ら

壁と卵

もしかしたら幻かもしれない。 毎回不思議な気持ちになる。 電車でしょっちゅう一緒になるおじさんのことだ。 おっちゃんじゃない、おじさん、という感じのする人。 紳士というと言いすぎだけれどおっちゃんじゃない、おじさん。 毎回きちんと座席に座っておられる。 文庫本をひろげていたりいなかったりする。 会ったり会わなかったりするのだがつい先日も遭った。 わたしはその人の見た目や特徴を覚えていない。 だから電車内では気付かない。 だって覚えてない。 でもしょっちゅう会っている。 降

数日前の帰路にて。 近所のスナックから酔ったおっちゃんの歌う『島人ぬ宝』が聴こえてきた。 「それがしまんちゅぬたァーからー」 思わず口から出たっていうか言うてもうた「へたくそー!」 笑いながら帰った。 あいつはきっとちょっと前に宇崎竜童の『身も心も』を歌っていたおっちゃんだ。 めっちゃ気持ちよさそうやな。気持ちええんやろな。酒も入ってるんやろうしな。 『身も心も』の時もへたくそで、めっっっちゃへたくそで、 でも、めっちゃ気持ちよさそうだったから笑ってしまった。

駅前に、遠足? 課外実習? の小学生たち。 通りかかった外国人観光客がにこにこと笑いかけて喋りかけて、盛り上がってた。 「Good bye」「ぐっばあああい」「ばあああい」 まさに〝うえーい〟ってなってたから思わず声を出して笑ってしまった。 また、同じ駅にて、 めっちゃ仲良く話をしていた外国人旅行者数名が 「Have a nice trip!」つって別れて行った。 知り合いちゃうかったんかーい。 ツッコんだあと、ちょっと、涙が出てしまった。 どちらも、身内事で毎週訪れ

サンクチュアリ 猿桜がいっぱい居た

とある神社の秋祭りに行ったら、 ここ数年コロナで開催自粛だった奉納こども相撲が行われていた。 しばらく観ていると、勢いよく土俵に上がってくるのも、勝ち上がるのも女の子のほうが多かった。もちろん服は着たままだけど。 元気な女の子たちは堂々としていて、 「●●ちゃん、横綱です~!」などと法被を着た司会のおねえさんに紹介されるときゃっきゃと手を挙げマイクで自分の名前を言い、おっきな記念品をもらって、勝利後の屋台のおでんを頬張っていた。 猿桜だ。猿桜がいっぱい居た。 * *