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【創作小説】クエスチョン・アーク|Ep.11 Cantata

こちらが最後の物語になります。
もう、プロムナードは必要ありません。

今日は喜ばしい日です。
この物語が完成するのを、見届けるのですから。


私は溢れんばかりの光の中へと導かれて出ていき、華々しいトランペットの音色と透き通るような青空に迎えられました。
そこはとても高所で、視界がどこまでも開けた崖の上のようなところでした。そこにあるものは、空と、風と、水平線まで広がっている水鏡の世界だけでした。その絶景に思わず息を呑み、私はしばらくの間、立ち尽くしていました。つい先ほどまで親しんでいた、ずっと続くかと思われた暗闇がまるで幻想であったかのように、何もない景色でさえ光で溢れて、ため息が出るほど美しいのです。
私は気が済むまで、どこからか聞こえてくる喜びのカンタータに耳を澄ませながら、目を閉じてその場に佇んでいました。気の遠くなるような壮観なひとりぼっちであるというのに、私は高揚していたのです。そのため、崖の先の方にある、どこかで見たようなカフェテーブルに気が付くまでに、少し時間がかかってしまいました。

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2,893字

現実と虚構の狭間で見るイメージを紡ぐ、哲学系幻想小説。

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