【創作小説】クエスチョン・アーク|Ep.4 Chocolate
今日はあまり天気がよろしくありません・・・そして久しぶりに風邪を引いてしまいました。あなた様はいかがお過ごしでしょうか。
ところで、疲れている時にチョコレートがとてもおいしく感じられることはありませんか。または、甘いものが無性に欲しくなったりするだとか。
私にとって甘いものは脅威ではありますが、現実逃避の空想が与えてくれる安息のように、生きる元気を与えてくれる劇薬として、チョコレートを一粒、口に含むことがあります。
チョコレートと言えば、私はシャンパンが使用されているものをとくに好んでいます。それはきっと、私自身の日常において華やかな祝福の席でしか振る舞われることのない、特別なお酒だからなのかもしれません。少しだけの非日常を一粒、味わうことができたなら、気の滅入るような憂さはゆるゆると解けていき、張りつめた心が少しだけ楽になるのです。
そんな私ですが、常日頃、心の現実から逃げない空想を表現したいと願っております。
シャンパンと言えば、ヴィオラが放ったガーベラの行方は分からずじまいでしたが、私の白昼夢は思いがけないところからはじまりました。
彼と幸せの話をしたからでしょうか、次の白昼夢の冒頭で、私はまるで彼が飛ばしたガーベラの花びらのような、華やかなオレンジゴールドのシャンパンの海に潜っていました。
そこかしこから点々と立ち上った繊細な泡沫が、頭上の遥か彼方まで、つつつ、とゆったりと流れていくのを目で追うのは、時を忘れるほどに優雅なものでした。あたりはとても明るかったのですが、頭上の方はとくに明るかったのです——その、どこまでも透き通った美しい色彩の向こうでは、ゆらゆらと光のカーテンがたなびいており、時折その隙間から私の瞼へ、優しい光の梯子が下りてくるのです——私はそんな恍惚とした世界の真ん中に浮かびながら、幸せの安息に身も心も委ねていました。その場所は確かに、私にとって幸せな感覚というものをよく表していました。体のどこにも痛みはなく、全てにおいて安全であることに安心していて、つるりとして非の打ち所などどこにもない、完全な自分——例えるのならば、上等なオリーブオイルにくるまれた、卵型の美しいホワイトチョコレートのような——がそこにあるだけでした。
私はどこか遠くの明るいところから楽し気な笑い声が聞こえてくるのに耳を澄ませました。改めて見つめてみると、幸せというものは私にとって、いろいろな形態をしているのです。姿があったりなかったり、質感が様々であったり・・・しかし共通するのは、この場所に全て示されているように、私を安らかで安心した、高揚した気分に包んでくれるような、美しいものである、ということのようでした。
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【創作小説】クエスチョン・アーク
現実と虚構の狭間で見るイメージを紡ぐ、哲学系幻想小説。
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