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【創作小説】クエスチョン・アーク|Ep.2 Viola

私は願い事を書くのが好きなのですが、あなた様はいかがでしょう。
いつか叶えたい夢をお気に入りの便箋にこっそりとしたため、まっさらな封筒にしまっておくのです——そう、まっさらな封筒に。
時々読み返してみると、まるで宝の地図のようでおもしろいものだなぁと感じます。それそのものが手に入らずとも、近くまで立ち寄ることができたのか・・・せめて近くまで立ち寄ることができれば、それまでには見えていなかった景色が見えるものですから。
そうしてまた新しい地図が描ける楽しみは、この人生を生きる醍醐味でもありましょう。

さて、ガーベラのことなのですが、私はその花弁がオレンジ色であることや、中心が黒目ではなく緑がかった黄色であること、ぴんと張った茎のしなやかさなんかを確かめることに熱心になっていました。それは私が今までに手にしたどんなガーベラよりも頑丈で、頼もしく感じられたのです。

すると、そこで不思議なことが起こりました。私の足元を中心にして、まるで水面に波紋が広がっていくように、ヴァイオレットやホワイト、イエローやブラウンなんかが交じり合った色の花弁が、ざわざわざわ、と音をたてて四方に伸びていったのです。私はまだ座り込んでおり、とても低い位置からそれを眺めていましたので、その様はまるで魔法のように感じられました。
色合いとその形から、パンジーやビオラを想像させるその花びらのカーペットは、しばらくすると、しん、と静まりました。すると、さらに私の足元あたりから、黒いブロッチが稲妻のような速さで一つの方向へ走っていきました。
そのとき、疑いようのない確信が私を誘いました。私はその導きに従うように、腰を上げ、線をたどりながらゆっくりと歩いていきました。

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3,287字

現実と虚構の狭間で見るイメージを紡ぐ、哲学系幻想小説。

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