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10月の楽しみ舞台!5本!

このところ生活のほとんどを占めていたお仕事が落ち着いたので、ゆっくりと劇場でもらったチラシの整理。一枚一枚いろんな角度から眺めて「どれ観に行こうかな〜」とニヤニヤしている時間がものすごく楽しい。好きな人との初デートプランを考えるほど緊張せず、かといって恋人に会うより興奮する。なんだろうこの感じ。たぶんだけどこれ、幸せ。

あまりに眺め暮らしていても、魅力的な舞台がありすぎて選べない。頑張ってなんとか3本、いや絞りきれずに5本を選んでみました。

日付はめちゃくちゃだけれど選んだ順にご紹介しますっていうかただ私が書きたいだけですけど。面白いかは劇場で観るまで保証はできませんが、ご参考までに!(ただしものすごく私の好みが反映されています)

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◆1:新国立劇場演劇『誤解』 10/4〜21

アルベール・カミュの書いた戯曲で、初演は1944年。あらすじを読んだら「やだーそんな誤解ツライ!」みたいな話なんですが、実際に東欧であった事件が元になっているらしいです。事前にあらすじ知っても知らなくても楽しめそうな内容なので、調べるかどうかはお好みで。ちなみにカミュと言ったら多くの方がご存知「太陽が眩しかったから」と人を殺したりした小説を書いた(←誤解)あのカミュ。その台詞が書かれた小説『異邦人』は、10代で読んでも大人になって読んでも、心臓の裏がヒリヒリ焼けるような痛みと渇き、そしてそこを風がふっと撫でて行く空虚さがある、素晴らしい小説ですのでぜひ。

この舞台、個人的に注目なのが、翻訳が岩切正一郎さんであること。今年59歳ですが、若々しさが踊るような瑞々しい言葉選びとリズム。それをさらりと流す大人の技も持つ、大好きな翻訳家さん!カミュの舞台は蜷川幸雄さん演出『カリギュラ』も翻訳されています。どんな言葉が誤解の渦の中で踊るのか、とっても楽しみです。

2018/2019シーズンより新国立劇場演劇部門の新芸術監督に就任した小川絵梨子さんの送る第1弾。カミュ!!!
なによりね、チラシが素敵すぎる。ザラつく深淵の恐怖、とでも言いましょうか。エドワード・ゴーリーみたいな、オディロン・ルドンみたいな、そんな黒の鉛筆書きの奥に色がじんわりと滲んでくる不敵さ。キャッチコピーがまた「わたしたちより人生の方がもっと残酷だよ」ってなんだそれ!知りたいその残酷!教えてその残酷!でも芝居の中だけでオネガイ!!と興奮してなにが行われるんだかわかんなくても観に行きたくなる恐ろしさ。コワいものって惹かれるよね。覗き込みたくなる、その誤解。行ってきます!


◆2:KAAT『華氏451度』 9/28〜10/14

KAAT神奈川芸術劇場×演出家・白井晃さんの舞台は至極だと思っています。KAATホールの奥に伸びた広い空間で、白井さんの幻想世界を存分に浴びられる。これまでの『夢の劇 -ドリーム・プレイ-(主演:早見あかり)』『マハゴニー市の興亡(主演:山本耕史)』も、アトラクションに飛び込んだら別世界へ連れて行かれたような、浴びるような演劇でした。それをSFだなんて現実を超えた世界観を体験できるのでは!?という期待。もう、期待、に尽きます。

すでに各メディアで公開されているゲネプロ映像では、かなり原作そのまま忠実な台詞が交わされていました。書いたのはレイ・ブラッドベリ。風刺&ディストピアSF小説の旗手。原作小説の発表は1950年ですが、今Twitterなどネットの各地で起きている諍いや想像力の欠如から生まれる地獄絵図がすでに的確に予見されている内容に、身震いします。これ、未来に書かれた小説なんじゃないの?

一部引用。物語前半部より。「本にはもっとマンガを入れろ、もっと写真を挟め。心が吸収する量はどんどん減る。せっかち族が増えてくる。ハイウェイはどこもかしこも車でいっぱい、みんなあっちやこっちやどこかを目指し、結局どこへも行き着かない。」「本が売れなくなるのも道理だといったが、一般大衆は自分がほしいものをちゃんと心得てるので、上機嫌でくるくる舞いながら、コミックブックはしっかりと押さえて手放さなかった。もちろん立体のセックス雑誌もだ。(中略)引き金を引いたのはテクノロジーと大衆搾取と少数派からのプレッシャーだ。おかげで、いまはみんな夜も昼もしあわせに暮らし、政府お目こぼしのコミックと古き良き告白ものと業界誌を読んでいる」。ご興味持たれた方はぜひ、自分のネット生活を見直しに。

ーーー引用:レイ・ブラッドベリ著『華氏451度(新訳版)』、伊藤典雄夫訳、ハヤカワ文庫


◆3:東京芸術劇場『ガラスの動物園』 10/27〜28

日本だけでなく世界中で人気の戯曲。今回は、フランスのスタッフと俳優による上演です。2011年に日本人俳優にて静岡県舞台芸術センター(SPAC)で上演され、話題に。同じく演出・美術はダニエル・ジャンヌトーがつとめます。

この作品、演劇系の学校に通えば、興味がなくとも読まされる戯曲ラインナップに入っていると思うんですよ。私もそうで、かーなーりー嫌々読んだのに、読み始めたら止まらないんですねこれが。散りばめられた言葉の層の隙間に、人間の感情や関係が挟まれ、浮き彫りになるのは自分の家族、家庭、その食卓や居間や玄関のセピア色の日差し、立ち上る匂い。ゾクリとしました。その生々しさが怖くて。

『ガラスの動物園』はフランスでは「センチメンタルなリアリズム劇」だとか評価されているらしいのです。それ、めっちゃわかる。センチメンタル。リアリズム。ええそうです。でも、そこには、血と肉と骨と空っぽの心臓、から溢れ出す沸沸とした感情。

家族。家族の思い出。

家庭や家族を描いた作品は、国の文化の違いも垣間見えて、その上で、人間の普遍性も迫ってくるから、翻訳家族劇って面白い。

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翻訳作品ばかりになっちゃった。これは私の好みですね完全に。なぜって翻訳劇は、自分がいま足をつけている日本という土地を見直すことにもなるから、それは演劇を見て自分の心のうちや周囲の人間関係を再発見することにも似ているから、好きなんですよね。


ついでにあと2作、気になっている作品を、ざっと。

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◆4:ゴールド・アーツ・クラブ『病は気から』 9/29〜10/8

60歳以上を対象とした、彩の国さいたま芸術劇場の芸術クラブ活動「ゴールド・アーツ・クラブ」。ノゾエ征爾さんの脚本・演出で、モリエールの戯曲を上演。還暦越えの大人数が、病気でもないのに行基だと思い込んだ男と周囲の悲喜劇を描くという構造がもう面白い。とりあえず、下のリンクを見て。そして舞台写真を見てください。話はそれからだ!!https://natalie.mu/stage/news/302079


◆5:こまつ座『母と暮せば』 10/5〜21

長崎で被爆死したはずの息子が、3年後に母のもとに亡霊となって現れる……

ぐあああああ書いているだけで泣きそうだ!!!

映画でも、吉永小百合さんと二宮和也さんの共演で、山田洋次監督が撮影していましたね。なんちゅーもんを映像にしてくれたんじゃあああとすでに予告CM段階から涙でズルズルになりましたが、宝物のような作品には間違いない。それも、生活の空気が息づく宝物。

富田靖子さんも松下洸平さんも、暖かい空気を動かせる俳優さんなので、きっと良い舞台に、きっと涙と鼻水で顔面ズタボロに、なる、はず……

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そんなこんなで、むりやり5本出しました。

今月は13日から国際的な舞台芸術フェスティバル『フェスティバル・トーキョー』も始まるので、そちらも楽しみ。

また、ここに挙げられなかった小劇場や映画祭でも、面白そうなものがたんまりあります。今日も下北沢の駅前劇場でゴジゲンを観て声だして笑ってきましたし。それら他の舞台の感想はつどツイートします。たぶん。

いやあ世のなか面白そうな舞台がいっぱいあるなあ!

あー楽しかった!!

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