こんな冬、望んでないのにね
「釣り合わないね、ごめん」
ただ君はそう言って、掴んでいた僕の手を静かに離した。 色白の肌に飾り付けられた鼻は、ほんのり赤くなっている。 寒さのせいなのか、わかってやれない僕のせいなのか。
国道沿いの道の途中、ただしっとりと時が流れた。 マフラーに隠れきれなかった耳に風が当たって冷たい。
「居なくならないでよね」
この一瞬に小さな粒になって散ってしまいそうな君に、怖くなってそう言った。僕が瞬きをしている間にいなくなってしまつんじゃないかそんな風に思ってしまった。
そのくらいに寂しそうな顔をしていて、それに付けて綺麗だった。
こんな時に呑気なことを思う僕だから、泣かせてしまったんだろうな。 コートの袖で涙を拭いて、歩き出す。それを追いかけるのが正解なのか、このまま見送っておくのが正解なのか。 もはや正解なんて存在しないのか、そっか手遅れなんだ。
僕は見送った。見送ったなんて言い方じゃ、僕が良い奴に聞こえてしまうから。逃げた と言った方がいいか。 君の背中は寒そうに悲しそうに丸まっていた。
その背中を抱きしめて、温めてやれるのは僕じゃなかったみたいだよ。いい人に、出逢ってね。ごめん。ありがとう。