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そっと布団をかけること

小学生くらいの時だろうか、母と一緒に寝ていた私はよく母から「おまえは布団はぐるから夜中なんべんもかけてやんなね〜」と言われていた。

布団をはぐる、とは布団をけとばすとかそういう意味だ。weblio辞書(三省堂大辞林)にも載っているから方言ということではなさそう。

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とにかく、掛け布団をかけてもかけても、寝ながら手足で巧みにはぐる。母はそんな私に夜中に3回も4回もかけ直してくれていたようだ。


子供は大人が思うよりずっと暑がりだ。


母方のおばあちゃんちに泊まるとき、毎回、厚くてボファっとした掛け布団の下に、これまた厚地の毛布を幾重に仕込まれて、寝かされていた。これがすごく苦手だった。とにかく、重いのだ。重くて身動きがとれない。目を開けて見えるのはただひたすら自分の身体に乗っかる高い高い布団の層と天井だけ。

「風邪ひかせらんによ!」「寝てる人は寒いから」が祖母の口癖だった。


時が流れ子供を授かった私は、あの頃の母や祖母のように、毎晩子供の布団かけに躍起になっている。

躍起になっている、というよりただただ毎日、夜中に3、4回勝手に目が覚める。

子供を産んで以来、身体がそう覚えてしまったようだ。

目が覚めたら子供の様子を確かめる。大抵は布団から大きくはみだしていたり90度回転して寝ている状態なので、うんしょと抱き抱えて戻して、布団をかけてやる。

私の身体に染み付いている。

祖母と母が私にしてくれていた事を。

睡眠中の幼かった私の身体が、覚えている。

首もとや背中にそっと触れる、あったかい柔らかい優しいものを。

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