推しカプ村の村長が死んだ 前編

三回忌を過ぎたのでここに記す。


推しカプ村の村長が死んだ。

まずは私の話からしよう。私は昔からマイナーカプに嵌まるタイプであった。マイナーカプ故、同志を見つけるとそれはそれは喜び、寄り添って村を作り自給自足の生活をするタイプであった。

ある時分、私はBというジャンルでM×Tというカプを愛でていた。ただしピクシブは0件。ドマイナーカプであった。いや、多分私の検索方法が悪い。別の表記で検索したら出るかもしれん。同志が見つけやすいように、私の作品には多様なタグをつけておこうな。

それから3年経ち、ピクシブは1件。自分の絵のみである。同志が出来ないことに心が折れ、それっきり作品は描き上げられなかった。(※現在は小説があります!が、S×T←Mだったので解散!!)

そんな時、リリース直前の話題のソーシャルゲームがあった。D社が手がける「T〇ST」である。

噂はDオタのフォロワーから常々聞いており、事前登録は既にしていた。それがついにリリースとなったのだ。

リリース直後に始めてみたところ、ゲームの内容も簡単(チュートリアルが長くて文句を言った)で、レベル上げも放置出来て飽き性の私にはとても向いていた。

因みに私はDの知識は殆ど無い。地方住みで現地は遠く夢の場所、アニメ映画もあまり見ていなかった。(ただ「手下」の知識はあった)なので、ストーリー楽しいな~くらいの感情でサクッと2章まで終わらせて、さあ3章だ!というところで大事件が起こる。推しが出来てしまったのである。

別記事参照:崖から落ちて複雑骨折した話

推し(以下Ca)が出来てから私はCaを幸せに出来る相手探しをはじめた。

普通のオタクは同学年同寮のTr×Caの道を歩いていた。しかし、私はマイナーカプの血を受け継ぐ部族。Tr×Caの大通りを歩いていた時にわき道を見つけてその道を歩き始めた。それが推しカプDu×Caである。

年下攻めが好きで、あまり似ていないタイプの二人が好きな私には最高のカプだった。しかし、その道はとても狭く、草木が生茂り、暗かった。

pixivは0件……。うなぎ上りで増えて行く他のカプ……。毎日検索しても、単語を変えて検索してもpixivは0件……。総人口は多い筈なのに、どうして私の行く先には誰もいないの……?共に歩んでくれる友達もいない……。まあ、約3年も一人で野宿生活をしていたんだ……。一人はもう慣れっこだよ……と、半ばあきらめの気持ちで歩みを進めていた、その時、道が拓けた。

村があったのだ。Twitterを拠点とする、Du×Caの村が目の前にあった。盲点!!!!!!最近の若者はpixivじゃなくてTwitterにいるらしい!!!!!

その村は小さいが、毎日落書きをツイートをする元気な村長が、周りのフォロワーにDu×Caを描いてもらい、それをRTして感想を述べて村を盛り上げていた。

私は遠くからその村の様子を眺めていた。そして、あの村長の下でなら、きっと私も楽しく推しカプを描き続けられる!!そう確信した。

ただ、村長とは面識がないし、今の私には手土産も無い。どう声をかけて良いものか……。よし!作り手ならコンタクトを取る方法は一つ!Du×Caの漫画を描こう!漫画を描いて村長に見てもらおう!

そう決めてからの行動は早かった。

まずは村長をフォローして、興味がありますとアピールした。長年生活していた森の中で、プロットを描き、ネームを描き、しまってあった原稿用紙に下書きとペン入れをして、パソコンに取り込む。ベタを塗り、トーンを貼って、セリフを入れる。久しぶりに作品を描きあげることが出来て、気分は高揚していた。(ハードルを下げる為にコマ割りは4コマ漫画にした)

そして、描きあげた5月17日(土)の朝、村長が出かけるツイートをしたのを確認して、描き上げた漫画を推しカプの名前と一緒にアップした。村長に喜んでもらえるかな?仲良くなれるかな?そう思いながら村長の帰宅を待った。

しかし、村長はそれっきり帰って来なかった。

その日だけならまだしも、次の日も、その次の日も、村長はツイートをしなかった。今までは毎日のように推しカプの話をしていたのに、5月17日の朝のツイートを最後に村長は姿を消した。

村長のフォロワーを漁ってみたが、村長の件について何の動きも無い。フォロワーのフォロワーに村長の鍵垢が無いか探して見たが、鍵垢なので分かるすべもなく、途方に暮れた。

ただ一つ分かるのは、私が漫画をあげた日に村長が姿を消した事だけだった。

常々私の作品は、ハッピーエンドというより、いわゆるメリーバッドエンドの作品が多い。それは「癖」というより「業」に近く、「もうこうなったらこうなるしかないよね……」と重い展開に持っていきがちなのだ。もしかすると私のDu×Caの解釈が地雷だったのか!?私が村長を「消して」しまったのか!?そう思った私は、泣く泣く村長のフォローを解除し、沈黙を守った。


それから数か月、村長の作品はTwitterから消えた。

鍵垢になったのか、アカウントを消したのか……真相は分からないが、カプ名で検索しても出て来なくなった。村長が消えてから、当時の村人も居なくなった。

その裏で私は描き上げた漫画をpixivに上げたり、アカウントを変えてTwitterでDu×Caの漫画を描いていた。すると、少しずつ人が集まり、そこはひとつの村になった。私以外にもDu×Caを好きな人がこんなにもいるんだと嬉しくなった。新しい村では私が村長のような立場になっていた。アンソロジーを発行したり、フォロワーがプロット交換を開催したり、WEBオンリーを企画したりと、様々な企画で推しカプを盛り上げようと今も頑張っている。

でもふとした時に、村長の事を思い出す。

この立場になっても、私の村長は今でもあなただけですよ、村長……。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?