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雑記_003

「もう、誰のことが好きなんかわからんくなったわー」

「ひとりで歩いているときとかに、ふと、歩いてる後ろ姿を思い浮かべてしまう人っておる?」

「あー、ひとりおるなー。なんで?」

「その人のことが好きなんちゃうか? よぅ知らんけど」

「なんで顔とかじゃなくて歩いてる後ろ姿なん?」

「やって、その人がこっちを見ないでどこかに歩いていく姿を目で追いかけてるってことやろ? しかもふと思い浮かべるくらいには意識して」

「ふーん、そんなもんかなぁ」
と言いながら、僕と並んで歩くその娘はつと立ち止まり、後ろからそっと僕のコートの裾をつまみながら、

「このまま、わたしを引っ張っていけ!」と、胸元に流れたマフラーを大きく揺らして、大笑いした。


12年前の冬の夜。

サポートの一部を誰かのサポートに繋げていけるのが理想です。途切れることなくー