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[自由律俳句]

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自由律俳句 俳句 ことば 季語なし
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[自由律俳句 010]

脇をさらす両腕を背後のあなたの首にまわす枷 パーカーの肩が滑るのを見ていた撫ぜられていた 合わされる額でも遠い距離の唇 20201212

[自由律俳句 009]

※ 衣 水たまりの陽揺らし過ぎるロングスカート プリーツと両肩の均衡崩す声の震え スリットから太ももが世界を覗いている リブニット腕組みとバストの充実感と 気丈さが保つAラインのシルエット (20200730) ----- 午前の外出、家を出て数分後に天気雨に降られる 天気雨って、出るタイミングを外して出ちゃった人みたいで、 「いや、ほら、陽出てますし、すぐに止むんで。あいすいません」みたい(違うか) 天気雨の時、そのまま少し濡れて先を急ぐ人やの

[自由律俳句 001]

※ 冬 手とだけ告げ差し出される手を結び歩く 唇の熱雪に巻かれる傘 意地悪と背ける横顔が笑っている マフラーに滑る髪を外套ごと抱きとめる 手が重なっているパーカーのマフの中 ※ さよなら さよならのかたちをなぞる群の中の目 さよならとひとり手を振る歩き疲れて さよならは残った石橋の勾欄蝉の羽の翅脈 さよならにどこまでも見透かされ笑う さよならを流し込む口の中に口で ※ 満ちる 遠ざかる棺に雨の降る心音 明日着るシャツが浮かばずに涙ぐむ 目の前の笑

[自由律俳句 002]

※ とどまる 好きにやればの横顔近ければこそ黙る 足首が首ならくるぶしは何とする あなたの後ろ姿を声だけで追い見つめる 今も隣で紫煙と毒舌吐いてそう命日 銀灰の雲見るふりでかすめるふくらはぎ (2020年6月 病院待合)

[自由律俳句 003]

※ ひよみ 二の腕と眩さ競う群生の向日葵 ピアス気づかず舌を切る角度 静かにと受話器から指つままれる舌 天井低いキッチン不器用を笑われ夕飯 ふたりはしゃぐ声を合図に浮かぶ二輪車 2020年6月

[自由律俳句 004]

※ 回忌 双眸にかかる朧雲前髪の黒 友八年恋人六月朝一葉 せがんだ煙草で涙目膝にかかる重さ 有限の腕しかない抱きとめる体がない これだけは仮でない墓石の前にいる 2019年10月

[自由律俳句 005]

※ 温み / ぬくみ 飲む? の後に出されるコーヒーが好き 見えたものをあなたは言わないで抱く 五つまで数えさせては掌でくるむ 温かいからキスをして朝ひとり ただ煙草をのんでコーヒーすする筒 (old)

[自由律俳句 006]

※ 雨の日 曇天に濡れることすら叶わず欠伸 雨男には龍神がポジティブを過ぎる手ぶら 路面叩く驟雨すでに濡れた気でいる左耳 猫とふたり丸い頬浮かべる雨宿り 後尾灯すぼめた傘の泣き声を拾う

[自由律俳句 007]

※ 夜 包まれる猫に焦がれて部屋の隅ひとり せいいっぱい膝を抱えるだけの顔 やさしくとひとり額の皮をつまむ 街とマッチはよく似てる消えて薫る 誰待ちか問われて気楽から孤独 (old)

[自由律俳句 008]

※ ひかる 朝日照る滲んだ茣蓙の目と右目 行き過ぎる車窓のビルに流されている 陸橋に揺れる天使のひまわり帽 ルー人参じゃがいも玉葱かしわ鼻歌 柘榴剥く覗く笑顔を耳で視る