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【梅園魚品図正】(13) 鱠残魚(しらうを)/かさご/水母(くらげ)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『梅園魚品図正 巻1


鱠残魚 シラウヲ

甲午睦月十四日 真寫
河魚類

鱠残魚  シラウヲ  シライホ
銀魚
王餘魚  『綱目』

鱠残魚、江戸に多し。両國川 及び 中川、又、尾久 にて網にてすくふ。

『本草』鱠残魚を無鱗の部に不載。是無鱗也。■條魚も相同じ、無鱗也。 [■は麥+丆+回]

和俗 以 鱠残 ヲ  ■須古サスゴ   甚 誤也。 [■は絲+成]

和俗 習而 不 察 以 誤 傳 之也。和俗 習而 不 察 以 誤 傳 之也。『本草四十四巻』鱠残魚 集解 可 順畿須古 無鱗 ナラズ 鱗。大 ナル者 方 一尺、又、麪條魚トロメ 以 筑紫 俗 呼  志呂宇於シロウヲ  。長 一二寸 小也。於 鱠残魚 ヨリ其潔白 鱠残魚 相同。三月 自 海 上 川水  魚人 以 やな  取之。

■ 按に、諸州 及び 江州 田上たなかみ・堅田、又、駿州なそより紙の如く四角に集ほして遠にをくる。 [■は王+罒+衣]

此を 淡■魚シラスボシ と云。又、タタミイワシ と 謂 物 有 別 可 考。 [■は羌+魚]

麪條魚は、関東にて ベラ と云。能、鱠残魚に類す。和俗、鱠残魚を白魚と記非也。白魚は ミゴイ 也。是、武王の舩に飛入者也。『和名抄』云、鮊魚 シロヲ と云。

※ 「江州」は、近江国おうみのくに
※ 「駿州」は、駿河国するがのくに
※ 「武王の舩に飛入」は、『史記』の「周本紀」にある「武王河を渡る。中流にして、白魚躍り王の舟中に入る。武王俯して取りて以て祭る」。
参考:『史記 第1 (漢文叢書 ; 第12)』『続国訳漢文大成 経子史部 第4巻


カサゴ

癸巳孟春十有五日 真寫
海魚類

カサゴ
一種 黒色者 是を、黒カサゴと云。
又 クロ眼張。

※ 「孟春」は、春の初めのこと。または、陰暦正月の別名。


水母 クラゲ

癸巳十月四日 真寫

『拾遺』出  水母クラゲ
 一名 海蛇  『石鏡』
    樗浦魚 『拾遺』

海蛇ミツクラケ、泥海にあり。故に、備前、及び、筑後に出す。又、唐水母あり。白礬水 を以て製して、簾にひろげ乾し、白くなりたる也。

水母 無 目 而 歩行をよぐ  テ     ス  云リ。故 糖蝦アミ  宿すむ

『崔禹錫食経』云  海月
 一名 水母  久良介

■  似 タリ 月在 ルニ 海中  故 以 名 之。 [■は豸+㒵]



筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心でのためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。

また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。
この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ

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