【観音霊験記 秩父巡礼】第九番明星山明智寺/横瀬の兵衛 2 mominaina 2024年8月5日 20:17 出典:国立国会図書館デジタルコレクション『観音霊験記 秩父巡礼第九番明星山明智寺 横瀬の兵衛』観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 第九番 明星山めうじやうざん明智寺あけちでら めぐり来きて その名を聞ば あけち寺てら こゝろの月は 曇くもらざるらん奉額 ひぐらしや たゞさへ急ぐ 道ながら横瀬よこせの兵衛ひやうゑ天正てんせうの頃ころ、横瀬よこせの里さとに兵衛といふ稚おさなき者ものあり。家いへ貧まづしきなかに、盲もうもくの母はゝ一人をもち、養やしなふべき業わざもなくて、此この寺てらの林はやしに来きて、菓このみを拾ひろひて糧かてとせしに、一日あるひ兵衛が菓このみを拾ひろひ居ゐたる所ところへ老僧ろうそうきたりて、母はゝの病やまひを愈いやさんと思おもはゞ、此この妙文めいもんを唱となへさせよ。則すなはち、「無垢清浄光むくしゆう/\くわう 恵日破諸闇ゑにちはしよあん」の二句にくを授さづけければ、兵衛ありがたく思おもひて、その文もんを母はゝに教をしへて、その日にちこの観音堂くわんおんだうに通夜つやをいたしけるに、暁あかつきにいたりて内陣ないぢんより明々めい/\たる星ほしとび出いでて、母はゝの 頂いたゞき を照てらすがいなや、眼まなこたちどころにひらき、母子ぼしとも驚おどろき、かつ、喜よろこびて、本尊ほんぞんを厚あつく拜をがみつゝ皈かへるがはやく、このこと諸人しよにんにしれ、領主りやうしゆより兵衛が孝心かうしんを感かんじて、田畠でんぱたを賜たまはり、また、此この本尊ほんぞんの利益りやくを末世まつせにしらしめんと、其その時ときより明星山めうじやうさんと名なづけられたるは、不思議ふしぎの灵驗れいげんなり。※ 「通夜つや」は、神社や仏堂にこもって終夜祈願すること。※ 「内陣ないぢん」は、寺院の本堂の奥にあって本尊を安置する場所のこと。※ 「灵驗れいげん」は、霊験。筆者注 ●は解読できなかった文字を意味しています。新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖 ダウンロード copy #古文 #古文書 #観音菩薩 #秩父札所 #観音霊験記 #観音霊験記秩父巡礼 #明星山 #明智寺 #横瀬の兵衛 #無垢清浄光 #恵日破諸闇 #横瀬兵衛 2