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『料理綱目調味抄』(7) 焼物の部/可用焼物魚の部

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

焼物の部

焼は火をつよくすべし。魚なまらず。炙ものは、火をとをく寛にやくを云也。

※ 「寛に」は、ゆるやかに。

向結むかふづめ

向結としやうするものは、尾首有て、本膳の長あるを云。鯛、鮒、鮎、あま鯛、大きす、いな、いし鰈、等也。
式の膳向結は切目の高成 ● 也。式の吸ものは鮒の一献也。

※ 「向結むかふづめ」は、本膳料理においておかしら付きの焼物のこと。
※ 「本膳」は、本膳ほんぜん料理のこと。室町時代に確立された正式の日本料理で、饗応の形式には「式の膳」と「饗の膳」があるそうです。

焼物

こん、焼、切目ともに、焼物也。漿しやうゆつけ焼、かけ漿、塩焼、いり酒、白酒、あさぢかけ、皷付焼、皷煎みそいり。

※ 「皷」は、味噌のこと。
※ 「あさぢ」は、麻地あさじ酒、または、朝生あさじ酒。豊後国で作られる酒の一種。(参考:『日本物産字引』『日本社会事彙 下』)

濱焼はまやき

大鯛、すゞきの類、一献を焼て、掛しる漿を用。夏は、蓼酢を用るもよし。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

  焼物  魚の部

筒に切を背切せぎりおろして切を切目と云。塩焼、漿付焼、掛漿、みそ付焼、皷いりは扣みそを酒漿にてなべにていり、鯛の身をいり付、みそともに出す。小鯛を鮒のごとく、山椒味噌付よくあぶりて、酒あつくして掛るもよし。切目、蒸て、葛あん。切目、小鯛は、かしらはすに切、一夜みそに漬たるもよし。経 日ば、したるくあぢはひそんず。

※ 「経 日ば」は、日をれば。

黄□魚あまだい

大なるよし。くずなと云。切目、皷漬、一夜塩もよし。小なるは、調味小鯛のごとし。

※ 「くずな」は、久豆菜くずな(方頭魚)。(参考:『和漢三才図会 巻第21−52』)

切目、調味、鯛におなじ。濱焼、蓼酢もよし。

かれ ひらめ

石かれい、塩焼、掛漿、蒸てくずあん、塩いり、漿いり。
ひらめは劣れり。調味おなじ。

まなかつほ

筒に切、漿つけ焼、むして葛あん、塩焼、糠漬よし。

さば

なまは、塩焼、かけしる、漿いり。塩は、やききて酒かけ。

ぶり

酒にている。焼て、あさぢかけ、白酒もよし。せんば煮、なまぶり、はまち、漿いり。

※「せんば煮」は、船場煮せんばに

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

あじ

塩焼、かけ漿。東武にて、中ぶくら。塩焼、蓼酢。夏日の景物也。

※ 「東武」は、武蔵国むさしのくにのこと。または、江戸の別名。
※ 「中ぶくら」は、中ぶくら。鯵の別名。
※ 「景物」は、四季折々の趣のある事物、またその場に興を添える珍しい料理など。

王餘魚きすご

漿つけ焼、塩焼、蓼酢、塩いり。
さより、たなご、たち魚、調味おなじ。

さけ

塩、付焼、子ともにかけしる、又、あさぢ生酒、生酒、白酒、もろみ等かけてよし。柚の酢かけてよし。むすみそいり、さすり塩とて、うす塩もよし。

ます

一夜塩をすれば、色よく味出る。常にある塩ます焼て、白酒、あさ地かけてよし。なまは、はま焼もよし。

江鮭あめ

調味、さけにおなじ。筒に切、子わたともに漿にて煎。濱焼にもよし。一書、蓼酢を掛。

うなぎ

かば焼、仕様いろ/\あり。大は悪し。中なる川うなぎよし。油多きはあしゝ。全躰なる時、竹刀にて皮を下の方へひたとこそげ、油をとるべし。又、一度焼て、あつき酒を数辺かくれば、油とれ、皮もやはらぎてよし。又、焼時、酒漿類、数辺付焼べし。

あゆ

塩焼、蓼酢、漿付焼。一流、一度焼て用時、又、焼は鮎の香、旨味むまみ出てよしと云へり。一書、焼びたしは、焼あゆに山椒みそを白酒にてすりのべ、座敷にてかくる也。又、生姜しやうが酢、みそをかくるもよし云々。石焼いしやきは、河原の石を焼て、其上にあゆを置、やくを云也。
はへ、はぜ、わたか、おいかは、はす、何れも調味おなじ。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『料理網目調味抄 5巻 [2]

いな

塩焼、かけ漿、漿付焼。とうがらしみそ付焼。大なるは切目、はま焼。

鰢鮫さわら

塩焼、かけ漿、むして葛あん。筒にも、切目にも。

こち

おろして切目、塩焼、かけ漿、漿いり、はま焼にも。

にべ [■は魚+㚇]

おろして切目。みそいり。

しゐら

塩なるもの中濱といふよし。焼て、朝生、白酒、土器にて酒いりよし。

時魚ゑそ

水ゑそとて、うす塩なるを、尾首を去り、紙に包て、むしやきにすれば、小骨口にさはらず。

はむ

かばやきにするは、擦て、身の方を細かに切めを入るれば、小骨切て、口にさはらず。漿、数辺すへん付て焼べし。

惣じて、なま魚の切目を焼は、身の方より先焼べし。塩魚鳥類は、皮の方より先焼べし。いづれも焼置て冷たるは、四季ともに甚悪し。



参考:『日本料理法大成(焼物仕様)』(国立国会図書館デジタルコレクション)

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