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江戸の花名勝会 ほ 八番組(坂東彦三郎)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『江戸の花名勝会 ほ 八番組

 おしゆん
 忠と義に切る 縁切榎は
 また結る時を 首尾の松

※ 「おしゅん」は、歌舞伎『身替みがわりおしゅん』に登場する 花川戸はなかわど の芸者 おしゅんのこと。
※ 「縁切榎」は、中山道の板橋宿にあった  縁切榎えんきりえのき  。現在も板橋区本町に榎大六天神(縁切榎)として祀られています。
※ 「首尾の松」は、柳橋の舟宿から山谷に向かう途中にあった松のこと。

『身替りお俊』のあらすじを簡単に説明してみます。

主君の姫君(園生そのうまえ)を探し出すために、芸者に身を隠して市中に暮らすおしゅん。おしゅんには 井筒屋いづつや伝兵衛でんべえ という恋人がいるのですが、彼は浪人で、園生の前を仇討ちの相手としています。主君の姫君である園生の前を守るか、恋人の井筒屋伝兵衛をとるか、忠と義のはざまで悩むおしゅんは、最後は自分が身代わりになることを決意します。

自分の首を取らせることで、伝兵衛は仇討ちを果たし、園生の前の身を守ることができる。だからといって、伝兵衛は決しておしゅんを切ることはできない。そこで、源太という知り合いに自分を切らせます。

  おしゅん
  忠と義に切る 縁切榎は
  また結る時を 首尾の松

縁切榎えんきりえのき  で別れて、ふたたび結ばれるときは首尾の松 … おしゅんの切ない想いに胸が詰まる気がします。

御蔵三河稲荷の神木とかや
引時は さきへ心か はしりて ●雪
いもがり行 首尾の夜
さふていふ 言の葉は 姥捨の森にひとし

※ 「三河稲荷」は、文京区本郷にある三河稲荷神社。


坂東彦三郎 御蔵神木首尾の松

井筒や伝兵衛 坂東彦三郎
 潮○焼松越
 ○天後迺月

御蔵神木 首尾の松
月あかり見きはめ 朧のふねのうち
あたなに上り 津め引に
しのび 逢相の 首尾のまつ

首尾の松のたもとに 猪牙舟ちょきぶね をとめて、伝兵衛を待つおしゅんの姿があります。

江戸の花、名勝会には、「蒸風呂 玄妙」「御料理 川長」「茶舟若吉」「大和」と書かれています。

「蒸風呂 玄妙」とあるのは、おしゅんが風呂屋から帰ってくるシーンに由来するものです。『身替りお俊』は、別名『湯上りお俊』とも呼ばれています。



筆者注 ○は解読できなかった文字を意味しています。
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