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【観音霊験記 秩父巡礼】第十六番無量山西光寺/円比丘

出典:国立国会図書館デジタルコレクション
観音霊験記 秩父巡礼十六番無量山西光寺 円比丘

観音霊験記 秩父順禮ちゝぶじゆんれい 十六番 無量山むりやうさん西光寺さいくわうじ

 さいくわうじ ちかひを人に たづぬれば
   ついのすみかは 西にしとこそきけ

奉額
  我人の 身もやすし世は なかせみ

※ 「ついのすみか」は、最後の安住の地。つい

圓比丘ゑんびく
當寺たうじ住僧ぢうそう 圓比丘ゑんびく一夜あるよつきかんじていたりしに、ふしぎなるかな、あたりのくさむらより幽然ゆうぜん老婆らうば姿すがたあらはれいでて、

※ 「圓比丘ゑんびく」は、円比丘えんびく
※ 「比丘びく」は、出家得度して具足戒ぐそくかいを受けた修行僧(男性)のこと。女性の場合は、比丘尼びくに

われは古へ優婆庚うばいなりしが、貪欲とんよく甚重じんぢうむくひによつて、阿鼻獄あびごくし、それよりさま/\にいきかはり、しにかはれどもそのごういまだつきず。わが 子孫しそんにしか/\のものあれば、これを彼等かれらつげて、わが 菩提ぼだいとぶらはせ給へ。又、當寺たうじへやがて灵驗れいげんあらたなる 観音くわんおんぞうをみちびけば、何卒なにとぞそのぞうにむかひて、わが  冥福みやうふくをいのり、悪趣あくしゆてんじて、楽國らくこくにおもむかしめよ」といひおはりて、そのまゝ姿すがたうせぬ。

※ 「優婆庚うばい」は、優婆夷うばい。在家の女性仏教信者のこと。
※ 「阿鼻獄あびごく」は、八大地獄の第八、阿鼻地獄あびじごく五逆ごぎゃく(五つの最も重い罪)と謗法ほうぼう(仏法をそしり、真理をないがしろにすること)の大悪を犯した者が落ちる所。無間むけん地獄。
※ 「しか/\」は、しかじか。然然しかじか
※ 「灵驗れいげん」は、霊験。

八大地獄の第八

圓比丘ゑんびく 称名せうめう念佛ねんぶつして、子孫しそんものへもつげてとぶらひけるに、はたしてとほからずに、他方たはうより観音くわんおん灵像れいぞうきたりたるは、かの幽魂ゆうこんのみちびきしものならん。いま本尊ほんぞんすなはち  これなり。

※ 「称名せうめう念佛ねんぶつ」は、仏の名をとなえ、心の内に仏を念ずること。称名念仏しょうみょうねんぶつ



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