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ねずみの嫁入り(1)結納の儀(両家の挨拶と結納品)

この作品は、江戸時代中期に出版された「ねずみの嫁入り」ものの赤本です。版元は鶴屋つるや喜右衛門きえもん。『江戸名所図会』に描かれる江戸有数の地元問屋です。

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『江戸名所図会 7巻 [1]

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『鼠よめ入』では、結納の儀から始まり、嫁入り行列、婚礼、出産、お宮参りへと話が進みます。ねずみたちの可愛らしい所作と洒落のきいた台詞が楽しい作品です。


結納の儀 お掃除

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入2巻


掃除を采配する番頭ねずみ

たらいの水かへて ぞうきんをよくあらつて ふきやれよ
たらいの水を替えて 雑巾ぞうきんをよく洗って 拭きやれよ)

廊下を水拭きする使用人ねずみ

はくをおした ように ひか/\ させますぞ
はくを押したように ピカピカ させますぞ)

玄関先に水打ちする使用人ねずみ

これ/\ おれが 水●● うちやれ
(これこれ 俺が水●● 打ちやれ)

これでは 人がふみこむ
たまらぬよふに むらなく うちやれ
(これでは人が踏み込む)
まらぬように むらなく打ちやれ)

ばんまでには かわくそ
せいだして はいてしま□
(晩までには乾くぞ)
(精だして掃いてしま□)


結納の儀 両家の挨拶と結納品

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『鼠よめ入2巻


これは やくそくのとをり よりは
ことのほかに をびたゝしゐ ゆいれだ
(これは約束の通りよりは)
(ことのほかおびただしい結入ゆいいれだ)

※ 「ゆいれ」は、れ。結婚の約束を申し入れること。ゆいのう。

されば/\ ていねい きでござります
(さればされば 丁寧ていねい でござります)

結納の品 綿

もくろくに おひきあわせ なされませ
(目録にお引き合わせなされませ)

結納の品 熨斗鮑

これへをあがり なされませ
(これへお上がりなされませ)

結納の品 諸白

上なたぞ おたのみ申ましよ
(上なたぞ お頼み申ましよ)

※ 「諸白もろはく」は、よく精白した白米で作った麹と蒸米でかもした上等な日本酒のこと。

あれたれぞ たるをうけとらしやい
(あれ誰ぞ 樽を受け取らしやい)

これはござつたしうへの ひきで物じや
(これはござつたしうへの引き出物じゃ)

紙一そくに ぜに二百づゝか
(紙一束に 銭二百ずつか)
とうヅゝ ●●みたい
(十ずつ ●●みたい)

※ 「ござつたしう」は、御雑多衆でしょうか。

結納の品 銀包と鳥

ごしうぎのしるしまでを うけ取なされませ
(ご祝儀のしるしまでを 受け取りなされませ)

あのほうよりも わたくしを こしました
(あの方よりも わたくしをこしました)

さあ/\ひらに をてあげられませ
(さあさあ ひらにお手上げられませ)

ゑんほう ごたいぎにぞんじ □□□□□
ひろういたしませう
遠方えんぽう 御大儀に存じ □□□□□)
(披露いたしましょう)

わたくしは ます●ないぬ● と申します
いごはべつこんに申 だんじましよ
わたくしは ます●ないぬ● と申します)
(以後は別懇べっこんに申しだんじましよ)

※ 「別懇べっこん」は、懇意にすること。昵懇じっこん
※ 「だんじましよ」は、だんじましよ でしょうか。


続きのお話はこちら ⇒「結納の儀(祝膳)

筆者注 ●は解読できなかった文字、□は欠字を意味しています。
新しく解読できた文字や誤字・誤読に気づいたときは適宜更新します。詳しくは「自己紹介/免責事項」をお読みください。📖