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【梅園魚品図正】(7) 鯔魚(ぼら)/鱵魚(さより)

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『梅園魚品図正 巻1


鯔魚ボラ

壬辰蝋月八日 真寫
河魚類

『大和本草』及び『多識扁』曰  鯔魚 子魚
『南寧府志』『産物志』 撥尾魚 スバシリ

和名 ボラ 又 伊セ鯉 又 名吉ナヨシ とも云

口女クチメ
神代巻下曰 女即鯔 

予曰
 ハ  ヘテ  ヲ   ト
鯔の少し小なる者を■ [■は魚+录] スバシリと云
又、撥尾スハシリ 又、洌走魚 『房総志』

 ノ ヲ  シ 初夏   トナリ  ル  ヲ  ヲ イナと云。

春、鮞を生じ、初夏に至り魚となり、鮒の如く浮游する者をヲボコと云。是、デキの名也。

※ 「蝋月」は、陰暦十二月の異称。
※ 「でき」は、稚魚、幼魚のこと。


其頭蛇に似り故に名く欤

『餘婔縣志 ニ曰、㧒人 リ  ヲ蛇頭 ト 。其頭、蛇に似り故に名く欤。

『巻懐食競』 其子  ホシモノ  とす。鯔子 和名 唐墨カラスミと云。又、馬鮫魚サワラの子をカラスミとす、二物一名。

或書曰
鯔歴  ヲ 水豹アザラシとなる云ゝ。可考。

日向国 檍ケ原の海にて、炎出見の尊、釣を垂れ玉ひし時、口女魚を釣る
針を即魚に取られ玉ふ。口女魚、則、鯔也。

『神仙傳』曰、介象 ト 呉王  ス ハ ニ  カ 最美 ヨキヤ象曰、鯔魚ボラ  ト

紀貫之の記に、カドノシリクメナワ
名吉ナヨシカシラヒラギと充者、此魚也。いつの世に欤、除夜に赤鰯の頭をなす事となり。又、『和名鈔』云、鯔 奈与也。

※ 「炎出見の尊」は、彦火火出見尊ひこほほでみのみこと瓊瓊杵尊ににぎのみことの子。


シン

癸巳三月二日 真寫
海魚類

『多識編』 シン
和名 左與利

異名 キヤウ公魚 銅ゼイ魚  [■は口+公+儿]

鱵魚の各ゑらに一つ宛 虫を生す。サヨリ虫と云。海粗ふなむしに似り。蟲類の部に詳。



筆者注 『梅園魚品図正』は、江戸時代後期の博物家、毛利梅園による魚図鑑です。説明文書は漢文体が中心のためパソコンで表示できない漢字が多く、漢文の返り点と送りがあります。読みやすさを考え、パソコンで表示できない漢字は □ とし、名称の場合はできるだけ [■は〇+〇] の形で示すようにしました。

また、漢文の返り点と送りはカタカナと漢数字、振り仮名と送り仮名はひらがなで記載しています。

この作品に引用されている文献については、こちらの note を参照してください。 → 【梅園魚品図正】文献まとめ

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