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【大阪】松が鼻

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『松が鼻(浪花百景之内)

木津きづかめはしの下 三四丁にありて、尻無しりなし川のわかれ口 寺島てらじまの頭とて、一かぶの古松 臥竜ぐわりゆう のごとくしげりて 実に奇観きくわんなり。ゆへに 松がはなといふ。

すべて此へん、ふな大工多く、はせんのしゆふく、しんざうふなおろし、とまりふねのほばしらは、あたかも九十九艸のしげるがとく、なつゆうべには松の下に舩をよせて 涼風すゞかぜあつさをわすれ、冬のあしたは雪の景色けしきに ● かくの ● しゐをかば 浪花ろうくわに ● 舩してはじめてた ● くの ● をおどろかすは たゞ ● のあたりのぜつけいなりかし。

※ 「ふな大工」は、船大工ふなだいく
※ 「はせんのしゆふく」は、破船の修復。
※ 「しんざう」は、新造しんぞう
※ 「九十九艸」は、九十九草つくもぐさ。キンポウゲ科の多年草。

一かぶの古松臥竜のごとくしげりて実に奇観なり
ゆへに 松が鼻といふ
此へんふな大工多く 泊ふねのほばしらは
恰も九十九艸の茂るがとし



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