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第十四話

 千聖と星陽がモフモフにまみれている…癒される…。
 千聖を迎えに生物学部に来た満月が写真を撮りまくっていると、星陽がじゃあなと言うように手を振りファインダーから消えた。モフモフとの尊いショットを何枚か撮った後に千聖の元に行き、聞いてみる。
「今日弥幸見なかったからバイトか何かなんだろ?星陽1人なら昼飯誘おうかなと思ってたんだけど」
「星陽は弥幸のバイト先に行くんじゃないかな。来てほしくなさそうなのが気になってるみたいだから、僕だったら見に行くって言う話してたんだ」
俺だったらバイト中に千聖に会えると元気出るけどなあ。思った満月はピンと来た。
「結婚式場のモデルのバイトか」
「やっぱりそんなバイトしてるんだ。大学で良く見るようになると、改めてスタイル良いなあと思うもん。遠くからでも目立つよ」
だが満月は以前見た写真を思い出し吹き出しそうになる。
「や、結婚式場の写真もかっけーのはかっけーんだわ。タキシード着てオールバックとかしてても外国人みたいで確かに似合ってる。でも元があれだかんな。いやいやお前そのキメ顔何とか思うと、もーウケてウケて」
などと思い出し笑いが止まらない満月だったが、その横の千聖は千聖で別のことを考えていた。

 大学から電車を乗り継いで数駅、駅のホームからでも見える高級ホテルとそれに付属しているイタリアの教会風結婚式場に星陽はついていた。
 うえ。何かスーツとか着てないと入れねーとかないよな。
ホテルの正面玄関は屋根付きの車乗り場になっていて、ホテルの制服らしきコートと帽子を身につけた姿勢の良い男性がいる。その男性がドアを開けてくれ中に入るようなのだが、開いたドアから見えるホテル受付は柔らかそうな赤絨毯に大理石の床、豪華な噴水まであり、一介の大学生が1人で入るのは勇気がいる仕様だ。
 裏口とか…あるかな?
張り切って来たものの早々に怖気付いた星陽は、ホテルを周回して中に入れそうな場所を探すことにした。と、どうやらホテルと結婚式場は完全に別の建物で、結婚式場は結婚式場だけで入れるようだ。

 式場に鍵はかかっていなかった。
撮影機材は置いてあるけど人はいなさそうだなと、初めて見るチャペルなどに感動しながら歩いていると、廊下の突き当たりを曲がり、ドレス姿の女性と私服の女性数人がやって来る。
 うわヤッベと思ったが普通に会釈されたので、こちらも会釈を返した。
さてはこちらが撮影場所かと女性たちが来た方向へ進むと出口があり、木立やベンチ、バラの花壇や小さな噴水がある庭に出た。
「お、ちょうど良い所に。ちょっとこれ運ぶの手伝って」
唐突に声をかけられて振り向くと、石の壁のようなものを運んでいる同い年くらいの青年だ。
「え、コンクリートじゃんこれ。2人でいけるの?」
ここまで1人で運んで来たことに驚いて思わず言う。
「まさかだろ。ハリボテだよ。重くはないけどでかいから1人だと大変でさ」
どうやら学生バイトと間違えられたようだったが、このまま紛れていれば撮影見れるじゃんと思った星陽は、そのまま青年を手伝うことにした。

 案の定スムーズに撮影現場にたどり着く。
ハリボテを現場担当の学生に預けながらふと見ると、中庭の端の方に弥幸がいるではないか。
 彫刻のあるガーデンテーブルセットで、椅子に座っている男性と何か話しているようだ。
 っわっ…タキシード似合いすぎかよ。
オールバックからちょっと崩した髪型で上着だけを脱いでいるのだが、背景の庭園も相まって、もうこれだけでもハイブランドの宣伝写真のようだ。
 それにさ…なんだろうな。色っぽい顔してんだよな。押し倒して来る前とかがこんな感じでさ。…そうそう、で、そうやってキスすんだよ。
と思い出していた時、星陽ははたと気づいた。
 …は?キス?
今あの男とキスしたよな?!

 撮影中ではなく休憩中だったし、自分には殴りに行く権利もあったと思う。
だが、なぜか体はその場から後ずさった。
そして
「え、お前どこ行くの?」
一緒にハリボテを運んだ男の驚いた声を背中に、その場から逃げてしまった


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第十五話〜弥幸✖️星陽

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