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【木曜日】 炭治郎、こんちんわん

言葉を覚えはじめたうちの娘はよく、単語を言いやすいようにクッションとなる発音をくっつける。ピンクは「ぴんくん」だし、ジャンプは「ジャンプン」。そしてなぜか、おいしい! は「おいしいねこ!」。

そしてどうやら好きな発音というものがあるらしい。「どんぐりころころ」の歌で一番好きなフレーズは「恋しいと」の部分で、挿絵の色んな部分を指差しては、「こいしいと!」を連発している。

きっと、名詞的な何かだと思っているのだろう。「恋しいと」が動物だったら、もこもこしているのだろうか。それともつるつる裸んぼで、もふもふの毛皮を「恋しい」といって鳴くのだろうか、かわいそうに、なんてことを想像して笑ってしまう。

そんな、型にはまらない自由な言の葉たちと、舌足らずな娘の発音を聞けるのも今のうち。

今日も良い天気だったので公園に行きました。
なぜか声をかけられることが多かった今日は、もくようびん!

ここ最近、昼寝が長く朝もゆっくりめな娘。寒くなってきて布団が恋しいからか、少し睡眠の時間がずれているのか、脳の発達が著しい時期だからか。とにかく、8時前に起き出す日が増えて、母はよく眠れて嬉しいことこの上ない。

朝食も時間を掛けてゆっくりしていたら、9時を過ぎる。けれども今日はそこから、バタバタと家事と準備をして家を出た。
今日は天気がいいし、私のコンディションもいいし、公園で遊んで帰って、義父母とテレビ電話をしよう、とぼんやり決めていたのだ。

少し寒いから、と、80サイズのマントを着せてみたらぴったしで、どちらかというともう小さいくらいだった。去年はあんなにぶかぶかだったのに。冬から冬の間に、娘は80サイズを通り過ぎてしまったらしい。

公園に着いて、さっそくブランコに乗せろという娘。小さく揺らしてやるものの、3往復くらいですぐに下りる。ブランコはもういいから、スプリング木馬へ行くわ! とばかりに走り出した娘を追いかけようとしたそのとき、隣のベンチに座っていたおじいさんに声を掛けられた。

「すみません、〇〇駅ってどこですか?」

おじい、声かけるタイミングがちょっと遅いんやわ…ブランコ中に言うてくれ…娘がもうダッシュしとるんやで、と思いながらも、出来るだけ丁寧に質問に応える。おじいさんと、少し向こうで立ち止まった娘を交互に見やりながら、目が離れてるとこういうとき便利だな、視野が広くて、と思った。

おじいさんが駅までの道を理解したころ、「うわーーーーん!!」と大声で娘が泣き出した。「おお、ごめんね、ママとお話してて」とおじいさんは言い、そして公衆トイレへ消えていった。ごめんねー、と娘に駆け寄る。お気に入りの遊具に乗って、娘の機嫌はあっという間に直った。

お次は滑り台。
最近の娘は、お友だちに向かって「こんちんわん!」と挨拶するのがブームなようで、手当り次第にお友だちに近寄って行っては、「こんちんわん」を連発する。軽く腰を曲げてお辞儀もするのだが、要するにとてもかわいい。

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先日は、とある年上の女の子にロックオンして「こんちんわん」を連呼し、「えっ、なに…」みたいな顔で無視されていた。「ごめんね、何回言うねんて感じやね」と私が言うと、女の子は「何回言うの?」と笑っていた。

(これは公園通いをしだしてうっすら感じるのだけれど、この年代の子は男の子のほうが関わりやすい。滑り台で「先にどうぞ」と先輩風を吹かせてくれるのはいつも男の子だし、女の子は話しかけると警戒心やら羞恥心やらでフリーズしちゃうことが多い)

その後も、手当り次第にお友だちに近寄っては「こんちんわん」を繰り返す娘に、ついに活発そうな男の子が恥ずかしそうに笑いながら「こんにちは!」と返事をしてくれた。笑顔のかわいいその子は、「こんちんわん」とお辞儀をしてじっと見つめてくる娘に、「なんだよもう」とでも言いたげな表情でけらけら笑いながら、「こんにちは!」と何度も返してくれていた。

付かず離れず、すれ違ってはまた、そんなやり取りを繰り返す娘と男の子を見て、私は心のなかで鼻血を流した。運命やん…という心の声があやうくマスクの外に漏れ出るところだった。

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今日も今日とて、「こんちんわん」を振りまいては、色んな子にスルーされつつ、マイペースに滑り台を嗜む娘。人見知りしないのは母譲りか、はたまた、まだその段階に達していないだけなのか。

徐々に滑り台人口が増えるなか、滑り口に佇んでは何人ものお友だちが先に行くのを見送る娘。男の子が譲ってくれたので、「ほら、おいで」と滑り口に座らせようとするも、なかなか座らない。男の子には先に行ってもらい、しばらく「滑るの滑らないの」問答をしているうちに、気がついた。

さてはきみ、滑り台から完全に前の人が下りるまで、スタートポジションに入らないと決めているな…?

真面目か! と思ったけれど、よくよく考えたら私も幼い頃はそうだった気がする。表現があっているか分からないけど、混ぜご飯が好きじゃない、あの気持ちに似ている。滑り台の素材を、味わい尽くしたい。人が居たら、減速したりで楽しめない。

と、娘が同じことを思っているかは定かではないが、そうこうしてるうちに保育園生が来て、場が一気に賑やかになった。一度、滑り台を離れる。

ブランコや独立型の滑り台を経由して、お次はスプリング木馬。…と思ったら、すでに満員。お気に入りの台の後ろで、泣き出す娘。「どうにかしろ」とばかりに、私の手を引っ張ってくる。「ママだったら私の悩みを何でも解決できる!」とでも思ってるんだろうか、うい奴めと思いながらも、「みんなの遊具だから! ね! 待ってよう」と説得を続ける。

そうしてしばらく待って木馬にありついたと思ったら、お次は二人乗りのスプリング木馬めがけて突進。こちらも保育園生で超満員だったのを、空いたところに乗せさせてもらう。向かいに座るのは、6歳の男の子だった。

お喋りな子で、「誕生日が早いんだよ」「もうすぐ小学校」だなんてことを教えてくれた。鬼滅の刃の話になったので「どこが面白いの」と聞いてみたら、「グロいところ」という返事が返ってきた。進撃の巨人と同じらしい。

作中の名言、「生殺与奪の権を他人に握らせるな」の「生殺与奪の権」を思い出せないようだったので、ググって意味と一緒に教えていたら、「ぼく、それ、一回親に握らせたことある」とかなんとか言い出したのでびっくりしていたら、「ゲームで」とのことだった。

それから彼は、自分はターミネーターなんだよ、地下にパソコンの空間を持ってるんだよ、機械音がしない仕組みになってるんだよと話した。

真実を探すべきところと、探さなくて良いところ。

揺れに身を任せて、娘は大人しく男の子と私の会話を聞いていた。

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どこからともなく、「私も〇〇くんと一緒に乗りたい」と女の子が声を掛けてきた。子どもならではのストレートな表現に、おばさんの胸がキュンとなる。「どうぞ〜」と娘を下ろすと、女の子は娘に向かって「かわいい〜」と言った。少し気を遣ってくれたその姿勢がまた、いじらしかった。

隣のスプリングシーソーにロックオンする娘。しかしシーソーの方も、大人気の超満員。娘、またもや泣く。保育園の先生が「代わってあげて〜」と生徒さんたちに声を掛け、固い顔をした女の子がしばらくして代わってくれた。

向かいに座る年上女子の激しめのボヨンボヨンに、ぎゅっと手すりを握りつかまる娘。向こうには、シーソーを押す係の子もついている。

と思ったら、先ほどのターミネーターくんが娘のシーソーを押しに来てくれた。あれ、きみ、さっきの女の子はええの。

「ちょっと強いなあ。こっちは子どもがいるんだから」

なんて言いながら、シーソーを押すターミネーター君。優しいなあ、と思っていたら、先生の集合の号令が掛かった。ひとり、またひとりとその場を引き上げていく。先ほど固い顔をしてシーソーを譲ってくれた女の子が、「ばいばい」と笑顔で手を振って去っていった。

ひとしきり親子でシーソーを楽しんだら、また木馬へと娘は走った。「こんちんわん!」と、隣の木馬の子に声を掛ける。横に立っていた統率係ふうの男性が、「かわいい〜」と声を上げたので、「保育園の先生ですか」と問うと、「いえ、我々は児童館です」と言って、活動内容などをとても熱心に説明してくれた。

聞くだけ聞いといて何だが、私はこの手の活動に顔を出さない。ごめんなさいね、と思いながら男性を見送った。

今日は体の調子が良いので、元気でコミュ力があるように見えるかもしれないけど、調子が悪い時はこんなんじゃないんです。勧誘に対して、絶対零度の空気を作るような人間なんです。

人にたくさん話しかけられたので、どうやら今日の自分は調子が良いらしい、と、娘を抱っこしながら帰るみちみちなのであった。

先週に引き続き、今週も公園ものがたりでお送りすることになってしまいました。長くなったので打ち切りましたが、このあと帰って、義父母とテレビ通話もして、なかなかに充実した一日でした。

そして、さきほど鬼滅の刃のアニメを3話まで見ましたが、たしかにグロいですね。2話あたりで視聴をやめようかと思い、4話のバトルシーンで持ち直したのですが、実は、グロさよりも何よりも気になっているのは、「炭治郎の心の声の多さ」だったりします。

まじで多い。
そしてこれは、自分の書き癖を指摘されているような気にもなって辛い。

これは完全に主観なんですが、女性は1人称視点、男性は3人称視点が強い人が多い傾向にある気がしていて、なので鬼滅は作者が女性と聞いて腑に落ちました。

もちろん、そうじゃない人もたくさんいらっしゃるんですけどね。ただ、エッセイ畑に女性が多いのはそういう理由もあるのではないかと思ったりします。

そういう意味で、鬼滅はとても勉強になります。
身につまされる。イテテテ。

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今週もあと一日。
我が家はハロウィンの写真を撮りそびれているので、今週末に撮ります。ぼけっとしてたらイベントごとってすぐに過ぎ去っちゃう。

皆様も、寒くなってきますがお体ご自愛ください。そして、気分が落ちたら、ファンタジーの、音楽の、エロの、美味いものの力を借りて乗り切りましょう。

1週間、お疲れさまでした。




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