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一休さんはどうしてあんなにもクリエイティブなのか

(第1著者の代理で投稿します)

「いっきゅうさぁ〜ん!!すきすきすきすき すき♪ すき♪ 愛してる♪」
みなさんこの歌でおなじみの「一休さん」というアニメをご存知ですか?ナウでヤングでトレンディでバカウケな齢25(ヴァンサンカン)の私(ミー)ですら,この歌は聞いたことあります。一休さんは,様々な問題に対して「とんち」の効いたアイディアを閃き,解決していきます。ではどうして一休さんはこんなにもクリエイティブだったのでしょうか?
今回ご紹介するのは,一休さんのように思考時に目を閉じると創造性が促進されることを示した論文です。

Yonemitsu, F., Sasaki, K., Gobara, A., Kosugi, K. E., & Yamada, Y. (2018). Close, and ye shall find: Eye closure during thinking enhances creativity. Palgrave Communications, 4: 80.(オープンアクセス

さてさて,一休さんが解決策を考えるときに決まって行うのが上のシーンの「目を閉じること(閉眼)」です(参考動画はこちら)。
本研究では,この目を閉じるという行為に着目をして,目を閉じると創造的な思考が促進されるのか調べました。実は,記憶の研究では目を閉じることで,記憶の想起成績が良くなる(物事を思い出しやすくなる)ことが知られています。この知見を応用して,目を閉じると外界情報を遮断でき,多くのリソースを思考に割くことで,創造的思考が促進されるではないかと考えました。

40名の実験参加者には,新しいお米やお茶の銘柄名についてできるだけ多く考えてもらいました。お米の場合は「〜ヒカリ」で終わる例(ソラヒカリなどの5例)を,お茶の場合は「〜茶」で終わる例(ソラ茶などの5例)を提示しました。それから,考えるときには目を閉じる条件,もしくは目を開ける条件の2つを設けました。シンキングタイムはどちらの条件も1分間でした。
考え出された銘柄名のうち「ヒカリ」や「茶」で終わる銘柄名は,提示された例と類似しているため,「創造的でないアイディア」に分類されました。一方で,それ以外の「ヒカリ」や「チャ」で終わらない銘柄名は,例に囚われずに自由な発想によって得られたものとして,「創造的なアイディア」に分類されました。

実験の結果,目を閉じて考えたとき方が,目を開けて考えるよりも「創造的なアイディア」が1.6倍多く産出されました。つまり,目を閉じると創造的思考が促進されたのです!

ちなみに,本研究の統計解析は,ベイズ推定を使っています。創造的思考の実験的研究でベイジアン・アプローチに基づいた統計解析を行った研究は現時点ではかなり希少です!その詳細は,論文中にRコードとともに(データごと)公開されていますので,気になる方はチェックしてみてください。

これまでに創造的思考を促進する方法は,ポジティブ感情を喚起することや身体運動を行うことなど様々発見されてきましたが,本研究は「目を閉じる」という非常にシンプルな方法でクリエイティビティが向上することを明らかにしました。
なので,アイディアが思い浮かばないときは,目を閉じてみてはいかがでしょう。きっと一休さんのようにクリエイティブになれると思いますよ。


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