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忘れ物・探し物、逆転の対策

(6月から、新たな書き方を開拓しようとライティング・ゼミに参加し始めました。この記事はそのゼミでの投稿記事です。リーダーシップや論理思考とのつながりをあえて言えば、どちらも人に動いてもらったり物事を変えたりするために使うもので、忘れ物・探し物を減らすこともそう、ということでしょうか笑)

ある朝、次男(小6)が学校に行く直前のこと、
「ねえ、俺の靴下知らない?」と次男。
「知らないよ。ないの?」と僕。
「うん」
「この間、お母さんに買ってもらってなかった?」
「買ってもらったけど…ない。あるのもあるんだけど片方しかない」
「あちこちでぽいぽい脱ぎ捨てるからだよー」

本当なら自分で探させたいところですが、学校に出る時間が迫っていたので一緒に探します。彼が靴下を脱ぎ捨てそうなところを捜索。ベッドの横に、行方不明になっていた片割れが落ちているのを発見。まあまあきれいそうなのを応急処置として履いて、無事学校に出かけて行きました。

こういう探し物、お子さんのいる人なら、よくありませんか? あと、忘れ物。大事だから忘れないようにと前の日に玄関に置いておいたのに、子どもが出かけた後、ふと見ると、その大事なものが玄関にちんまり置かれたままになっているとか。「いやー、子どもじゃなくて自分が探し物や忘れ物の常習犯で…」という人もいるかも。実は僕もかつてそういう感じでした。大人になったからちゃんとできるとは限らないですよね。

でも、子どもにせよ自分にせよ探し物で時間を取られたり忘れ物で後悔するのはできれば避けたいもの。最近「これは効果ありそう」と思う方法を見つけた(気がする)ので、書いてみたいと思います。

そんなの無理だと確信するべき

まず、何かを上手になるには、その達人を真似するのが良いと考えました。探し物や忘れ物の少ない人を見てみると、二つのタイプの達人がいるように見えます。一つは、元から物事をきちんとできている人です。整理整頓が行きとどいているので物が一瞬で見つけられます。前もって持って行くものを用意していますし、時間的にも余裕を持って行動しているので忘れ物とかめったにしません。ただ、この元から物事をきちんとできているタイプの人を真似するのは、普段あまりきちんとしていないタイプの人には難しいですよね。僕も根がずぼらなので真似できる気がしません。

探し物や忘れ物が少ないもう一つのタイプの達人は、「きちんとするとか自分には無理だ」と確信している人です。ホント確信している。この「確信している」という部分が大事です。確信しているから、きちんとできない前提で、それでも大丈夫なように手を打っています。これが少しでも「頑張ればちょっとはきちんとできるかもしれない」とか思っていると、対策が不十分になって、忘れ物、探し物を繰り返すことになります。

だから忘れ物をしないように気をつけようとか、探し物が多すぎるからきちんと整理しようとか、思うのはいいけど、それに頼らない。できるようになれたらうれしいけど、できないから忘れ物や探し物で苦労してきているのだから、「きちんとするのなんか無理だ」と思った方がいい。それでも大丈夫なように環境を整えた方が、状況は改善されやすい。目が悪ければめがねをかけるようなものですね。

ポイントは靴下を脱ぐ場所

僕が見て来たところでは、少なくとも一つ、試してみる価値のある方法があります。それは「動線に合わせる」ことです。やっておきたいことを、その人の動線に合わせます。

例えば冒頭の次男(小6)の場合、本人がその方法を思いつきました。「帰ってきたらすぐ玄関で靴下を脱いで洗濯機に入れちゃうことにした」そうです。彼の場合、靴下は学校に行くときに履くもので、いったん家に帰ったら家の中では裸足、遊びに行く時は冬でもサンダルです笑。だからこれまでだと、学校から帰ってきてくつろぎだした時、たとえば自分のベッドで寝転んだ時とか、ダイニングでYouTubeを見始めた時に靴下をぽいぽい脱いでいました。そのまま片付けないのでベッドの横に落っこちたり、誰かが蹴飛ばしてどこかに行方不明になっていたのでしょう。

でも、もうその日は履かないんだったら、玄関で靴を脱いだ時に靴下も脱いでしまい、玄関横の洗面所に直行して洗濯機に放り込んでしまえば、なくなることはありません。次男が考えた案は、まさにやるべきことと彼の動線が合っています。

同じようなことを定年間近の旦那さんについて考えた友人もいました。旦那さんはしょっちゅう「鍵はどこに行った?」「財布を忘れて出かけてしまったから届けて欲しい」と騒いで、その受講生の方も巻き込まれていました。そうなってしまうのはどうしてか考えて見たら、帰ってきてから鍵や財布を置く場所が決まっておらず、しかも分散していたとのこと。そこで、冷蔵庫のすぐ横にトレイを用意して財布や鍵を旦那さんに置いてもらうことにしたところ、一気にこの問題は解決したそうです。なぜ冷蔵庫かというと、旦那さんが帰宅すると最初に、そして絶対寄るのが冷蔵庫だったからだそう。まさに動線が合っているわけですね。

眼の動線にまで合わせる

最後に、もう一つ事例を。長男が小学校の頃、やはりよく忘れ物をしていました。不定期に持って行く手提げバッグなどは、忘れないように前の晩にランドセルの横に置いておいても忘れてしまうのです。ランドセルを持っていこうと思ったらランドセルしか見ていないというのは親に似ています笑。

それで試しに長男に「絶対気がついて持って行くような方法を考えてみてよ」と言いました。最初に彼が出した案は「朝着る服の上に載せておく」というもの。「それだと、服を着た後、出かける前にいろいろなことをやるから忘れて行くよね」と言いましたが、そもそも彼は朝着る服を前の晩に用意なんかしていないので無理だろうというのもありました。

次に出て来たのは「玄関に置いておく」というものでしたが、これもおそらくその瞬間彼は出かけることしか考えていないので、やはり忘れて行きそうです。ただ「うーん、それは…」と反論しかけて、忘れ物を一日しないよりも、試行錯誤することで学ぶ方が良いかなと思って「やってみたら」と言いました。

ところが彼は後でやってきて「靴と靴ベラと組みあわせておいた!」と言ってきました。なんだかよく分からないので見に行ってみると、玄関にあったピンクの靴ベラで仕掛けを作っていました。靴ベラの先を自分が履いていく靴に突っ込み、靴ベラのもう片方の先を忘れたくない手提げに引っかけていたのです。靴は必ず履いていくので、それにくっついている手提げが眼に入るだろうということです。体の動線に合わせるだけじゃ足りないので眼の動線に合わせたアイディアで、これが功を奏したのかこの時は忘れずに済みました。またその後、彼の対策はもう少し洗練されて玄関のドアノブに手提げをかけるようになりました。

靴ベラで手提げに動線を作ってあった

このように動線を合わせることは忘れ物・探し物対策にけっこう効くように思います。それでは解決できない場合は? やはり「きちんとするのは無理」と割り切った上で、それでも大丈夫なように策を考えてみることかなと思いますが、どうでしょう。

(早稲田大学グローバルエデュケーションセンター 高橋俊之)

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