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大人にも学び満載の生徒総会参観

次男(公立中2)の学校の参観に行ってきました。見応えがありました。

特徴的なのは、教科の授業よりも生徒総会とその準備のホームルームを前面に出していたこと。生徒達が「学校でやることについて自分たちで決める」中ですごく学んでいることを見せたかったのだと思います。実際、とても見る価値がありました(大人も学べる!)。親は「受験に向けてうちの子は大丈夫か」と気になりがちですが、むしろこのように実際に使えるようになるために教科の授業があるのですし、こうして使っていれば「試験が終わったら忘れてしまう」ことも減ると思います。結果として受験にも効いてくるでしょう。

生徒総会の議題は体育祭のチーム分け。学年やクラスを超えて赤、青、黄とかで対抗でやりますよね。あれのやり方の原案が生徒会から提示され(縦割り4チーム)、これに対して各クラスから、いや2チームがいい、いや学年混合やめてクラス対抗にしよう、いやそもそも体育祭をやめて文化祭にしては、といった修正案が出され、議論をしていました(全学年8クラス、約250名)。

各クラスはホームルームで生徒会原案への反対理由、自分たちの主張の理由、反論への備えを用意して生徒総会に臨んでいます。クラス内で担当が分かれていたことは、一部の人に任せてしまうことを減らしていたように見えました。

そうして臨んだ生徒総会では、最も変化の大きな「文化祭に変えよう」という修正案から提示され、出したクラスと生徒会の主張の後、他のクラスも意見を述べていました。意見がある時はクラスのプラカードを上げて指名を受けるのですが、小1のクラスの挙手のように思い切りプラカードが上がり「うちに当ててくれ!」感満載なのが印象的でした。

流れがよくできているのと、議事進行役(生徒会とは別にいる)が優秀で的確な論点を提示しているのと、発言も主張→理由を簡潔に述べているのとで、とても密度の高いディスカッションが行われていました。これは大人の会議も見習えるところがすごくあると思いました。

修正案の検討が終わると採決に入るのですが、ここでICTが上手に使われていてChromebookから各自投票します。その場で集計がわかり決定した上で次の修正案検討に移ります。体育館内の数カ所に置かれたディスプレイには今討議されている修正案の論点が表示されていて、議論が分かりやすくなっていました。一緒に観に行っていた長男(高2)は、「おれらの時よりこなれている」と言っていたので、試行錯誤しながらここまで来たのでしょう。展開に対してゆうも「それはおれも賛成!」「確かに!」とか言いながらおもしろがって見ていました。他の保護者も優れた主張に対しては「おー」とか声がもれたり、大きな拍手をしていたりしていました。

ずっと生徒会原案が残り続けたのですが、最後で2チームにする修正案が生徒会原案を採決で上回り、これに決まりました。その直前、ちょうど次男がこの案の優位性を説明する発言をしていて、とても良い主張の仕方をしていました。後で「あれは自分で考えたの?話し合って出したの?」と聞いたら、「最初は自分で考えたけど、チームメンバーのフィードバックをもらって改良した」と、自分案と改良策の記録を自宅のPCからアクセスして見せてくれました。

担任の先生や校長先生と話したところによれば、生徒総会を重視するのはこの中学校の特徴で、他ではむしろ減る傾向のあるのだとか。しかし二つの意味でこの方がずっと良いと思います。一つは「力の向上」の意味です。各教科で学んでいることがどう実際に役立つのかがこの方がぴんと来るので意欲も定着率も高まりますし、考える力(学ぶ力)も上がります。

もう一つ大きいのは「社会を自分たちで作っていけるようになる」という意味です。まず「物事は自分たちで決めるものなんだ」「現状を変える提案をして良いんだ」と思えるようになること。そして、そのプロセスを協力して進めるやり方を経験からつかめること。

この2点から、僕はぜひこれを続けて欲しいと思った一方、一つ大きな課題を感じたことがありました。それはこの生徒総会を参観していた保護者が少なかったことです。生徒総会準備のホームルームの時もクラスに2,3名しかいなかったのですが、その後の教科の授業ではぐっと増えて、そして生徒総会の前に帰っていました。

そういう親からは、生徒総会に時間をかけている学校に「大丈夫なのか?」「もっと教科の方に力を入れてください」と言いたくなるのだろうと思いますし、実際そういう声が少なからずあるとも聞いています。

ここをすりあわせるために、学校と親との対話をうまく作れたら。最近、深い対話について学んでいるところなので、そんなことを思って帰ってきました。
(文責:早稲田大学 グローバルエデュケーションセンター(GEC) リーダーシップ開発プログラム 副統括責任者 高橋俊之)

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