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武藤敬司引退試合〜side of ajpw 再会と邂逅 普段着で暴れた3匹の怪物達〜

さて前回はノアサイドの視点に立って2.21武藤敬司引退興行について語りました。今回は全日本プロレスサイドの視点でのお話です。ノアと全日本の対抗戦として組まれたこの試合。全日本は宮原健斗、諏訪魔、青柳優馬。対するノアは金剛から中嶋勝彦、拳王、征矢学。かつて健介Officeで先輩後輩の間柄であった中嶋と宮原の禁断の再会。さらに諏訪魔と拳王の邂逅。私の中で注目ポイントが多く、とても楽しみなカードでした。

この試合の感想を端的に述べるとするなら。「祭に呼ばれた三人組が暴れ回って去っていった」。という言葉で表現できます。まずは入場。全日本側はいつもより早いテンポの曲でしたが、入場から「大ケントコール」で(私が)盛り上がりました。試合は宮原と中嶋のマッチアップから開始。ロックアップの体勢はとらず中々組み合わない。それでいて互いが視線を切らず高い緊張感をドームの観客に伝えました。その後の流れも激しさと情念があり。両者の体の強さと空間を掴む頭脳が光る展開でした。

ここまでは私も「やっぱり今日は宮原と中嶋の試合かなー」という印象でした。しかしそうさせなかったのは諏訪魔と青柳優馬。諏訪魔は拳王の打撃や征矢の突撃をものともせず。リング上でも場外でもひたすら圧力をかけていました。彼の繰り出す技は全てシンプルでしたが一つ一つが重い。まさにスーパーヘビーの重さと強さを発揮しました。

そして青柳優馬。彼もまた自分の武器である「いい意味で空気を読まないマイペースさ」を出し切りました。武藤引退興行で武藤プロレスLOVEポーズを。ノア所属でもなく、武藤と繋がりが強いわけでもないのに。この大会で誰よりも早く繰り出す強心臓。また直線的に向かってくる相手をおちょくるなどの空間コントロールの巧みさは、このメンバーで唯一の20代とは思えないものでした。

試合自体は拳王が青柳優馬にPFS(ダイビングフットスタンプ)を決めてノアが勝利。青柳優馬は世界タッグ王者でもあり、形の上では完敗と書くメディアもありました。しかし試合後にも暴れまわる諏訪魔を見る限り、試合のインパクトは全日本がとっていたと私は感じました。

全日本の三人組はこの試合で特別なことはしていませんでした。諏訪魔が宮原や青柳優馬と組む。普段より早送りの入場曲。そうした部分は普段と異なるものでしたが、彼らの戦いっぷりは新木場での試合と大きくは変わりません。自分たちのデカさと体の強さをシンプルに観客全体に伝える。そこにフォーカスしつつ各々が異なる手段で自分の空間を作る。ドームでの試合経験がなくても「大箱も小箱も関係ないよね」と試合ができる。三人のプロレスIQの高さが垣間見れました。

もちろん対戦相手の金剛の三人が打撃が武器の選手だったことで、それを受ける全日本側の体の強さとハマったという要素はあります。ノアの中でも他団体への切り込み隊長的な位置(仕事人集団)である金剛が対角に立っていたのは全日本にとっても己の良さを活かしやすかったかもしれません。

とはいえドームという大箱で正装にならずに普段着の試合で観客を唸らせたこと。それは全日本ファンが胸を張れることだった思います。試合後に中嶋の言葉は少なかったですが、拳王と征矢が青柳優馬の持つ世界タッグへの興味を示したり。宮原は中嶋への興味は残しつつ、健介Officeの後輩であるマサ北宮にもをちょっかいを出しています(ミヤハラかな)。宮原と中嶋のシングルは実現するのか?そして諏訪魔が「ノアといえば頭に浮かぶのは潮崎豪」と語るように。諏訪魔と潮崎豪の再会だって実現してほしい。武藤引退大会をきっかけに新しい何かが生まれる予感がしますねー!



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