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小川良成VS清宮海斗〜導く者と導かれし者

トップ画像は@shun064さんの作品です。

若者が悩んでいるときに「寄り添うこと」が正解なのか?「叱咤激励すること」が正解なのか?その2つを両立させることは理想的だが中々難しい。しかしそれらを見事に両立させた。小川良成というマスターによる清宮海斗への導き。6.13小川良成VS清宮海斗はまさしくそんな試合だった。


今の清宮が停滞してると私は思っていない。しかし諸々本人の言動であったり、結果が出せていないという部分から「清宮はスランプに陥っている」と捉える人が多い。直近でも6.6サイバーファイトフェスでの上野への敗戦など、そうした停滞イメージを持つ人の印象を覆すことは出来ていない。


そんな中組まれた小川とのシングルマッチ。小川は清宮の師匠であるだけではない。全日本→ノアへ繋がる技術体系の源流。さらに三沢光晴の相棒として今に至るまでノアの土台を守り続けている。無観客ながらも「三沢光晴メモリアル」を冠する大会で。小川がノアの未来たる清宮と対決する。なにかに導かれたかのようなカードである。


試合は終始小川が清宮をコントロールし続けた。大技を殆ど出さず。しかし同じ技で同じ箇所を攻めることはせず。クラシカルな多彩な技で清宮を攻めたてる。序盤は腕を中心に攻めるも、中盤清宮が場外に転落した際にひだり膝を痛めたと見るやの膝攻めに転換。小川は技術だけではない。場外やロープに急所攻撃。更にはレフェリーに至るまで。使えるものは全て使って清宮を攻める。時計の針は進むが、観客を全く飽きさせない展開を続ける。最後は清宮のドロップキックを小川がいなし、変形の足取り式エビ固めでスリーカウントを奪った。


それでは清宮は小川に全く歯が立たなかったのか?そうではない。この試合がこれだけ観客を楽しませたのは。決して小川だけの力のではない。清宮は小川の誘い水にしっかりと反応し、切り返し合戦にも食らいつく。小川の領域に正面から飛び込んで戦った。いくら小川といえども、清宮ほど食らいつける選手でなければ。これだけのロングマッチには至らなかったはずだ。小川の性格を考えても、腕のない相手に付き合うことはしないだろう。


清宮はそもそも「持つ選手」ではない。アマチュア格闘技の実績があるわけでも。スーパーヘビー級の体格があるわけでもない。しかしそれらの要素を全て叩き切る。技術という名の刀を必死に鍛え続けている。それを見守っているのが小川なのだろう。

だからこそ悩んでいる清宮に対して。「お前には俺についてこられるだけの腕がある」「これだけ出来たんだから自信を持て」。そうした寄り添い。そして「だけどベテランの俺に負けてる」「結果が出ないからといって刀を研ぐことから逃げるな」という叱咤激励。


小川は清宮へ「相反する2つの強烈なアドバイスを行った」と私は考えた。小川良成が清宮海斗を導く存在である限り。清宮海斗が大輪の花を咲かせる時は必ず訪れる。

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