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11.16全日本プロレス新木場大会〜声出し応援の熱気は計算された構造と共に〜

全日本プロレスの11.16新木場大会に行ってきました。この日は声出し応援可の大会。全日本の声出し応援可の大会に行くのは久しぶりです。試合が始まるまでは「ちゃんと声出しできるかなー」「自分の声出しがズレてないかなー」などと少しの不安はありました。しかし試合が始まるとそれらは杞憂となりました。

観客の中に積極的に声出しをしている方が多かったこと。そして会場が新木場ファーストという小箱だったこと。これらの要素も大きいです。しかし私はそこよりも団体として「声出し応援のしやすい試合構成だったこと」が大きかったかな?と思いました。

まずは第1試合が大森隆男vs井上雅夫というベテラン対決。そこにレフェリーは和田京平。両者入場後にリングアナが「レフェリー和田京平」とコールすれば。自然と「きょーへー」と観客も声を出す。まさに掴みはオッケーでした。


思わず叫びたくなる「きょーへー」

第2試合にヨシタツ&TAJIRIとイザナギ&ブラックめんそーれのアジアタッグ選手権を挟みここまではベテラン勢いが会場の空気を作ります。

第3.4試合はそこまで打って変わってジュニアのシングルリーグ戦です。この日は青柳亮生vs井上凌と佐藤光留vs田村男児。前者はデビュー1年未満の井上が闘争本能剥き出しの戦いで王者青柳に迫る気迫を見せ。後者は先輩佐藤に押されつつも田村が馬力で跳ね返す。若手のハツラツとした試合で場内からも自然と大きな声援が飛びました。

大舞台での先輩超えを果たした田村男児

一旦休憩を挟み第5試合は宮原健斗&ライジングHAYATO&椎葉おうじvsジェイク・リー&青柳優馬&大森北斗の6人タッグ。休憩明けの空気文字通り一変させたのは三冠王者宮原の入場でした。彼が入場した瞬間に観客は大声援で応え、そこから会場は宮原健斗の空間となる。言語化が難しいのですが「他の選手とは明らかに質の違う空気」がそこにありました。

試合自体も全日本らしい明るく楽しくは激しくを体現した6人タッグ。バラバラに個人が戦っているように見せつつも、要所で連携して数的優位を作るのは全日本の伝統芸ですね。


三冠ベルトが己の体の一部になっている宮原健斗

一旦「明るく楽しく」で出来上がった会場の空気。ここからは「激しく」そして「カオス」の空気となります。

世界最強タッグ決定リーグ戦の公式戦として、まず第6試合は土肥こうじ&羆嵐vs石川修司&サイラス。羆嵐が160キロ超えのサイラスを持ち上げるというハイライトはありつつも最後はサイラスが暴走しての両者リングアウト。場外を多く使うことで観客も自然と声が出てきます。

第7試合は斉藤ジュン&レイvs永田裕志&安齋勇馬組。大型サイズの兄弟コンビである斉藤ブラザーズが反則攻撃含めて永田&安齋を追い詰めます。9月の日本武道館大会でデビューした大型ルーキー安齋も奮闘はしますが、斉藤ブラザーズのパワーと巧みなタッグワークの前には通じず。レイが安齋を抑えて斉藤ブラザーズが勝利を収めます。


人間風車でぶん投げる安齋

試合後にも永田&安齋に暴行を加える斉藤ブラザーズ。そこに飛び込んだのは芦野祥太郎と本田竜輝。斉藤ブラザーズに攻撃をしていると、更には斉藤ブラザーズと同じブードゥーマーダーズの諏訪魔とKONOも登場。混乱するリング上ですが、レフェリーがこのままゴングを鳴らしメインイベントの諏訪魔&KONOと芦野&本田の試合が開始となります。

混乱の中始まった試合は諏訪魔とKONOが徹底的に芦野と本田を傷めつけます。彼らのサイズを活かしたパワーあふれる攻撃に加え、レフェリーの目を欺く反則介入攻撃。斉藤ブラザーズまで投入したこれには観客も大ブーイング。歓声ではないですが、観客もヒートアップしてきました。


この一撃で決まったかに見えたが…

反則介入には反則介入で。ではありませんが斉藤ブラザーズが諏訪魔とKONOに加勢するなばと。芦野と本田の盟友である児玉裕輔と花畑正(立花誠吾)も乱入して。斉藤ブラザーズの介入を排除します。

ハイライトは試合終盤。諏訪魔のバックドロップの前に屈するかと思われた芦野ですが、キックアウトして諏訪魔をアンクルロックに捕らえます。諏訪魔も切り返しを何度も狙いますがしつこく締め上げた芦野の前に遂に諏訪魔がギブアップ。世界タッグ王座組からの劇的な勝利を見届けた観客は大声援で芦野と本田を称えました。


芦野執念のアンクルロック

コロナ禍によって声出し応援が制限されてから丸2年以上。これにより観客の声出リズムにもブランクが発生しました。いきなり声出し応援が許可せれても昔のようなリズムで応援することは難しいかもしれません。

この日の全日本プロレスの試合はそうした観客に対して「声出しリズムを取りやすい構成」で応えたと私は思います。第1試合和田京平の「きょーへー」でスイッチを入れて。若手のハツラツさとスーパーエースの輝きで声援を。ヒールの非道な戦いでブーイングを。そして最後は逆転勝利による大歓声。観客が声を出しやすい試合が多かったことは全日本としての狙いがあったと私は感じました。

もちろんそこには大声で率先して応援をリードする観客がいたことも大きいですし、会場のサイズ感もありました。いずれにせよ団体と観客が一丸となって盛り上げる。11.16の新木場はそうした空気によってとても素敵な空間になっていました!全日キテますよ!

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