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戦いから逃げないこと〜ファンキーエクスプレス

ファンキーエクスプレスというユニットをご存知だろうか?プロレスリングノアで活躍するモハメドヨネ、谷口周平、齋藤彰俊、井上雅央の4人が組むユニットである。ド派手なカラフルなコスチュームに入場時のペンライト。試合も遺恨や因縁などとは無縁の明るく楽しい展開が多い。こうした点からファンキーエクスプレスを「お笑い系」と揶揄する声もある。しかしそうした「明るく楽しい展開」は彼らの実力の一部でしかない。

モハメドヨネは藤原組。谷口はアマレス。齋藤彰俊は空手。と根っこに格闘技のバックボーンがある。コミカルに見られる井上雅央も90年代前半という、プロレスラーという仕事が選ばれた者でなければ生き残れなかった時代に。全日本プロレスで「生き残ってきた」選手である。彼らは4人ともコミカルさの裏には「強さ」を隠し持っている。

そうした「強さ」をさらけ出したのが5.31のGHCタッグ戦だ。王者組は20年プロレス大賞最優秀タッグである杉浦貴と桜庭和志からベルトを奪取した、中嶋勝彦とマサ北宮。特に中嶋は前哨戦からファンキーエクスプレスのモハメドヨネと谷口に対して「お前らは廃業しろ」と舌鋒鋭く口撃していた。

そんな中で行われたこの試合は良い意味でファンの期待を裏切る展開となった。序盤こそ「楽しい試合」を見せたモハメドヨネと谷口。しかし中嶋とマサ北宮の熱量に呼応するかのごとく、徐々に「激しい試合」に変貌していく。大型選手らしくパワーを存分に出し。一方では王者組の打撃や投技を正面から受け止める。特に打たれ強さという面では、ファンキーエクスプレスは王者組を圧倒していた。更に普段は見せない「強さ」をはらんだ鋭い眼光を見せるなど、闘志を全面に出した試合となった。最終的には中嶋勝彦のヴァーティカルスパイク(垂直落下式ブレーンバスター)でモハメドヨネが沈んだが、彼らのプロレスラーとしての強さは観客に強く刻み込まれた。

ノアのプロレスには様々な魅力がある。明るさ、激しさ、楽しさ。しかしどんな試合であれそこには必ず「戦い」が存在する。その他のエンタメとプロレスが一線を画すのは、そうした「戦い」があってこそだと私は感じる。確かにファンキーエクスプレスは明るさや楽しさを全面に出している。しかし彼らは決して戦いから逃げていない。ノアが掲げる「自由と信念」も、自由と同時に「プロレスは戦いである」という信念をはらんでいる言葉だ。もしかするとノアの哲学を最も表現してるのはファンキーエクスプレスなのかもしれない。

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