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プロレスリング・ノア 原田大輔引退によせて

※画像は@shun064さんの作品です。

拝啓

あなたがいつからノアのリングに上がっていたのか?私はそれを即答することができません。言い訳をさせてもらえば「いつから参戦したか?」について気にならないくらい。あなたはノアに馴染んでいました。そしてあなたもノアに愛着を持っていたように私は思います。

思えばあなたは常に「見えない過去」と戦っていたと私は感じます。過去の栄光のノアジュニアという歴史。それが眩いがゆえに。何かというと「あのときに比べて…」という心無い言葉であなたは比較されていました。しかし「あのときの選手」の多くはあなたがノアに本格参戦した頃には不在でした。丸藤など団体に残っていた選手もヘビー級を主戦場にするなど、「過去を直接超える機会」を作れないまま。それでもあなたは過去のノアジュニアを超えるために奮闘していましたね。

私があなたの試合で印象に残っているのは、小峠篤司と組んでの邪道外道との試合です。鈴木軍に侵略され為す術もない状況で。それでもあなた達は必死に切磋琢磨して素晴らしい試合を見せてくれました。大げさでもなくあのときあなた達は、暗闇の中にいた方舟を照らす灯でした。

また鈴木軍撤退以降の焼け野原になったノアであなたはRATEL'Sを結成しました。このときもまた先行きが見えない状況でしたが。あなたは明るさと激しさでノアに新しいファンを呼び寄せてくれましたね。

あなたはノアのジュニアにとってどんな選手だったのか?私にとってあなたは「ノアジュニアの大黒柱」という存在でした。エースという言葉を用いなかったのは、あなたの常に「ノアのためノアジュニアのため」という姿勢があったゆえです。エースは中心選手ですが、ときにエゴイスティックな面もあります。初期のころを除いて。私はあなたからそうした匂いは感じませんでした。あなたの主語はいつだって「ノアでありノアジュニア」だったと思います。そこに団体を支える愛情を感じたからこそ、私はあなたがノアジュニアの大黒柱だと考えています。

そんなノアジュニアの大黒柱たるあなたが引退する。それはとてもショックなことです。ドクターストップがあったからでもありますが、あなたは自分の意志で「引退」という決断をしました。自分で自分の歩みを止めることができる。これはあなたが強い人だからこそできた決断だと私は思います。勢いに乗ってアクセルを踏み続けるほうが案外楽です。先のことを考えずに突っ走るのは自分のことだけ考えればできてしまいます。その中でもブレーキを踏むことができる。様々なことを考えて止まることもまた勇気が必要です。

あなたが引退という決断を下してくれたからこそ。私はあなたの引退試合を見ることができます。あなたが引退を決めずに、何かがあったとしたら?私はあなたにお別れの言葉を伝えることすらできません。「お別れの機会をあなたが作ってくれたことに」。そして「引退後のあなたのことを見られる機会を作ってくれたことに」。私は心から感謝を申し上げます。

あなたは引退後に一旦ノアから離れると仰っしゃりましたね。それは残念ではありますが、自覚症状のないまま引退するあなたの心境を考えると致し方ないと思います。しかしいつか心の整理がついたとき。ぜひノアに戻ってきてもらいたいです。もしその場所を指定させてもらえるのならば?そうですね。宮脇純太と矢野安崇のGHCジュニア戦での解説なんてどうでしょうか?その試合がメインで行われるならその大会名はもちろん…。

最後になりましたが、私はあなたに会えて楽しく素敵な時間を過ごさせていただきました。誠にありがとうございました。原田大輔という人間にこれからも多くの幸せが訪れることを心よりお祈り申し上げます。

敬具


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