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ボロ布日記 vol.0 ボロ布日記の説明書、あるいは服についての意見表明

 サマリーポケットという寺田倉庫のサブスク型ストレージサービスを使ってCDやレコード、本、服なんかをダンボール単位で預けています。そろそろ夏/冬物の衣替えを考えなければと思って、クローゼットを開けてはたと気付きました。生来の収集癖のせいで服の量が尋常じゃないことになっているのです。特に会社を辞めて私服を着れる機会が増えているということもあり、このままだと持っている服がクローゼットに収まりきらないという非常にダサい事態に。


 以前はファッションポリスの服オタ友人とシェアハウスをしていたので、服用の共同部屋などもあって良かったのですが、今の部屋のクローゼットは小さいので、そんな贅沢も言ってられません。そこで、自分のワードローブのポートフォリオや収集基準の見直しも兼ねて、持っている服をアンダーウェアの一枚までレビューしていく連載をすることにしました。このシリーズの目的は啓蒙や自慢、おすすめではありません。「自分はなぜそれを持っているのか」というごく内省的な自問自答です。(noteにまとめて全世界に公開する理由は、思考の過程を後から見直すためとモチベーション維持のためです。100年後の人とかに見つかって、「ふーん、この時代の人はこういう事を考えてこういうものを着ていたのか」とか思われるのが理想です。)

 人間を構成する基本的な外部要素は衣食住です。生きるために衣食住が必要で、そのために人間は働いたり悩んだりしています。個人的には、食に関しては今のところ最低限健康であれば、あまりこだわりはありません。食の快楽を追求しても一過性のものに終わってしまうので、少し虚しい気がしています。住をこだわるには、お金と時間が足りません。また、生まれるところや国籍は選べないので、ある程度制約があり、イチから理想を追求していくのは不自由です。また、定住生活が性に合わないので、衣がある程度住とシンクロするようなライフスタイルを送っていきたいとも思っています。


 衣に関してはかなり自由な時代に生まれたと思います。かつて布はそれをそのまま税として納めても良いとされるほど基調なものでした。100年ほど前までは基本的に庶民は新品の服など着れず、古着を直して直して着ていたと聞きます。それが今ではイノベーションにより布の生産コストはどんどん下がり、廃棄される服や環境負荷が社会問題になっているほどです。おかげで服について悩む人は殆どいなくなったでしょう。それほど大枚を叩かなくても、手入れ次第で何十年も長持ちするような最高級品質の布や服が簡単に手を入ります。お手軽な趣味です。


 一方で現代は服に関して何か追求できる最後の時代なのではないかと思います。ユニクロの一強体制が出来上がりつつあることからも明らかなように、コストが下がったことによって、人々の関心は服から離れつつあります。これは皮肉なことです。関心が薄れれば、世に出回る製品のレンジも狭まり、多様性が失われて自由度は下がります。かつては作れたが、今となってはもう作れない高品質の布や縫製の服というのは多々存在します。かつて職人が担っていた技術が工業製品に駆逐されて失われたせいです。だからといって、工業製品は悪であるとか主張したいわけでは有りません。それぞれに良し悪しがあると思います。ただ、職人の技術を享受できる比較的最後の時代にいることは間違いなさそうです。そうした時代背景も踏まえながら、服について考えて収集して着るのが好きです。

 とはいえ、持っている服は古着かユニクロが大半です。古着が多いのは、時代を経たものは品質が保証され、機能面で完成されていることが多いからです。高い/安い、古い/新しい、ダサい/カッコいいに関わらず、服を買う時は「一生着たいかどうか」を基準にすることにしています。ユニクロに関しては、アパレル業界でいまだかつて無いほどに成長する巨大企業のプロダクツを同時代に目撃、観察するというポリシーを持って買い漁っています。

機能性の他には、ちゃんと着てやれるかどうか、着ていて楽かどうか、その服のバックグラウンドにどんなストーリーがあるかどうかを重要視しています。

なお、コーディネートやサイジングも下手くそなので、私自身はあまりおしゃれではありません。むしろオシャレとかクソくらえと思っています。


 中高時代に陶芸に執心していたことも有り、実用的なプロダクトを通して世界や歴史を感じることが好きです。何事もそうですが、ブツを作って市場で売るという行為には、ありとあらゆる世界の知識が凝縮されています。なかでも服というのは面白いプロダクトです。ある側面では芸術品としての価値をもち、ある側面では道具であり、素材やクオリティによっては人間の寿命以上に長持ちします。糸のより方や布の織り方については物理学が、原料や染色、洗いについては地学や生物学、化学が、デザインと縫製については人間の体に関する知識が欠かせませんし、流通や価格といった側面では経済学、経営学、財務会計、M&A、マーケティング、ブランディング理論、物流の諸要素も多いに関係します。そのあたりのことも更に自分で調べて深めながら記事を書いていければと思っています。

 ちなみに、体型は身長は172センチ、体重60キロ前後の骨細です。

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