かっさん
今現在私と交流のある友達と呼べるひとは片手で収まる。
両手で数えるとなると入る友人の一人が「かっさん」だ。
かっさんとは中学時代に出会った。
サバサバした性格の彼女は剣道部に所属していた。
親しくなったきっかけは忘れてしまったが、なにか響くものがあったのだろう。私達は結構いつも一緒にいた。
そんなかっさんの実家は裕福とは逆であり、色々と苦労をしてきたようであった。遠い夏の日、花火大会の夜に我が家に連れてきた時に母がせっかくだから持っていきなさいと桃を手渡した時に
「嬉しい!ありがとうございます!初物だから家でみんなで食べます!」
と答えたかっさん。
そういうところも大好きだった。
共通の友人であるMちゃんとも仲がよく、中学卒業まで長いこと一緒につるんでいた。
高校へ進学し、別の学校になってからもMちゃん宅が本屋を営んでいたこともあり、そこでよく顔を合わせた。
そして結婚すると連絡が来る。Mちゃんと共に私にも出席の依頼が来た。
二つ返事で応え晴天の下、熱田神宮での儀式と二次会に参列させていただいた。
晴れやかに輝くようなかっさんを今も思い出せる。
その後妊娠出産を経て第二子が同い年だった事を知り、子連れで再会した。
かっさんのお家へ招かれて皆で写真を撮った。
幸せな日々がこれからも続くと疑うこともなく。
その後、日々の忙しさやアレコレを言い訳に連絡も交流も途絶えてしまう。
でもかっさんのことは大切な友人として忘れたことはなかった。
今日。
Mちゃんからの電話に胸騒ぎがした。
「もるちゃん!!大変なことがおこったんだわ!!」
聞きたくない、と本能で思う。
「……なんでわかるの。私も知りたくなかったんだけどね。かっさんが金曜日に亡くなったって」
どうして。
まだ私達53年しか生きていないのに。
「今日がお通夜だから行ってくるけど、あんたは無理せんでいいで」
「詳しく聞けたら聞いてくるでね」
そう言ってMちゃんは電話を切った。
私はぼんやりしながら40年前のことを思い出していた。
「ねえ、今思っていることとかすぐに伝えられたらいいのにね!手紙や電話じゃなくて、すぐに伝わったらいいのにね!!」
毎朝の恒例行事、したためた手紙を交換しながらかっさんが言った言葉。
翌日にならないと伝えられない逸る想いを抱えながら当時、私達は過ごしていた。
携帯電話もなければ当然LINEもない。
あの頃からかっさんは精神的にも私と一緒にいてくれていたのだ。
かっさん。
忘れないよ。
ずっと、ずっと忘れないでいるよ。
これからも。
絶対に。
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