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ネコ 11歳

ネコを飼い始めて干支が一巡する。

学童の先生が保護した捨て猫だったネコどもは手のひらサイズだった。
あの頃小学生だった息子は社会人になって娘は大学生になった。
私はただ年を取って白髪のババアになり、ネコもただ年をとっておじいニャンとおばあニャンとなった。
ヨモという雄とクロという雌のきょうだいネコである。

そのヨモが糖尿病を発症したのが三年前の春のこと。
それからというもの朝夕のインスリン投与を欠かさず食事にも気を遣ってきたのだが一月に血糖測定に行ったところ、それまで落ち着いていた値が上昇していた。
獣医師と相談してインスリンの量を少し増やしてみようとなり、様子を見ていたのだが何やら元気がない。日常的に飛び乗れていたカウンターに登れなくなってしまっている。慌てて動物病院へ向かったが恐れていた低血糖ではないし、むしろ値自体が改善傾向にない。
「関節炎の可能性もあるけれど、触ってみたところ嫌がるでもないしもう少し様子見でいいと思います」

そんな三日前。
とうとう机程度の高さにも登れなくなってしまった。

老化なんだろうか。
しかしクロはひょいっと飛び乗れる。
ヨモは高さを目視し構えて、構えて……止める。
先月には走り回っていたのに今はゆっくり歩いて移動している。
ただの老化だと思いたい。
彼は食欲もあれば身を隠すでもない。
死期が近づいているとは思いたくない。

大事だった犬は13歳で空に帰っていった。

20年生きるネコは稀かもしれないが、自分のネコがそうだったらいいのに。
と。
飼い始めた時からずっとずっと思っている。

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