日記(底冷やし)


今日は、朝部屋を出て階段を降りていくと、

オートロックのところに座敷わらしみたいな格好の子どもが立っていた。

座敷わらしかな、と好奇の目で見ていると、

「なんすか」

と座敷わらし。

近づくと意外と大きい。150cmくらいの男。

なんか大丈夫かな、と思ったので

「大丈夫ですか?」

と聞くと、

「僕『底冷やし』と言います」

と座敷わらし。

「底冷やし」

「はい」

聞くと、彼の名前は「底冷やし」。

彼が来てしまったことでうちのアパートはこの先1週間、エントランスから底冷えするのだとのこと。

そうじゃなくてもどうせ寒いので

「全然大丈夫ですよ」

というと

「そうですか、なんかすいません、こっちも仕事で」

とのこと。大変。

ちゃんとしないと天引きされる額が変わってくるらしい。

妖怪界も大変だと思う。

あれ、でも彼は妖怪なのだろうか。

そこはまだ聞いていなかった。

「あの、底冷やしさんって妖怪なんですか?」

すると、底冷やしは

「はい」

と言った。合っていた。

それから、

「座敷わらしと間違えられたりしないですか?見た目とか雰囲気近いですけど」

と聞いてみたところ、

よくある、とのこと。

しかし、

「まあでも効能は変わらないですからね」

と、本人はあまり気にしていないようだった。

「効能」という表現にはピンと来なかったが、

意味はなんとなく通じるし、きっと妖怪界のあれなのだろう。

私は、

「へえ」

と返す。

底冷やしとはどうせこの先1週間毎日会えるのであっさり別れ、私は駅へ。

底冷やしはもちろんオートロック横でステイ。

お互い頑張ろうね。

ホームに着いて、なんとなく

『底冷やし』

と検索してみる。

今までごまかしてきたが、妖怪名として聞いたことなかったのだ。

 底冷やし 妖怪

で検索すると、

 もしかして、『ココヤシ』?

としか出てこず、

『底冷やし』という言葉には1件もヒットしない。あれ。

出てくるのは南国の画像ばかり。

検索ワードを変えても同じような感じ。

これはどういうことなのだろうか。

帰って聞いてみよ。

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