日記(チートイツ)


今日は、道を歩いていると、

地面にリャンピンが転がっていた。

屋外でリャンピンを見るのは初めてだ。

新鮮だなあと思っていると、

さらに1m先くらいに今度はローソーを見つけた。

近づいて行くと、さらにその先にパーピン。

ただ楽しくなってきた。

それから

ペー

イーソー

シャー

ウーワン

チュン

などを見つけながら歩いていくと、

いつの間にかちょっとした西友に着いていた。

せっかく着いたし買い物をしておくのも良いか、と思い、鍋の素や白菜などを買って外に出ると、

出口で小3くらいの男子が母親の隣でめそめそしている。

そばを通ると、2人はこんな会話をしている。


「あんためそめそしないの」

「だって僕のチートイツ…」

エコバッグからネギがのぞいている。

今晩は鍋なのだろうか。

鍋とも限らないか。

「チートイツはもうしょうがないでしょ」

「だって…」

「何でこんなところに持って来たのよもう」

「僕のチートイツ…」

「店には落としてなかったでしょ?」

「うん…」

「もう…でもあと落としたとしたら、ここまでの道かしら」

「そう思う…」


ここまで聞いて私は、あっ、と思った。

来る時に見たあれだ絶対。

少年に教えてあげよう。

「あの」

「はい?」

「さっきそれあっちで見たかもです」

「まさか」

と、母親。

息子と顔を見合わせる。

「それ、この子のチートイツですか?」

チートイツかどうかは分からないが、

多分モノ自体はそうだ。

「そうです」

私が小走りで案内すると、駐車場の隅っこにスーピンが転がっていた。

ちょっと先にチュンが見えている。

これだ。よかった。

「これですよね?」

尋ねると、

「ん…?」

顔を見合わせる親子。

それから、

「あの、これはドラですよね?」

と、母親。

ドラかどうかは今分からない。

「裏ドラは僕のじゃない…」

と子供。

「裏ドラかどうかは今分からないじゃないの」

と母親。

何を言っているのだろうか。

私は、

「なんかすみません」

と言うと、

「とんでもないです」

と母親、

そして

「もっかいあっち探そう…」

と息子。

でも絶対親子が探しているのはこれな気がする。

もう一度ちゃんと伝えてみよう。

「ちなみにあの、あっちにパーソーとかシャーとかもありましたけど、違いますか…?」

すると、

「パーソーとシャーって何が違うんですか?」

と母親、

「たしかに…」

と息子。

そうだろうか。

仕方ない。

「なんかすいません」

すると、

「いえいえ、わざわざありがとうございます」

と母親、

「ありがとう。お母さんあっち探そう…」

と息子。

親子は小走りで東駐車場の方へ去っていった。

帰宅して、なんか鍋を作る感じまで持っていけなかったので、私はチキンラーメンをゆがいて食べた。

麺をすすりながら改めて考えたが、やっぱりパーソーとシャーは全然違うと思う。

そう思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?