日記(ポニテ)

今日は、久しぶりにポニーテールで出かけた。

時間に駅に着くと、ちょうど電車が来ていた。

よかった、間に合った。

これを逃したら、色んな人に謝らなければならないところだった。

スレスレで乗り込むと、ドアが閉まる。

プシュー


席はたくさん空いていたので、

これは座ろうと一歩踏み出す。

すると、


ギュン


後頭部をうしろに引っ張られる感覚。

一歩踏み出せない。

あれれ、と思い振り返ると、

ポニーテールの結び目近くがドアに挟まってしまっている。

あらあ。

つまり、ほぼ全長がドアの向こう側にいる。

なんとか引っ張ってみるものの、ドアは固い。

ポニーテールは全然こっち側に来てくれない。

やばい。

そうこうしていると、そのまま電車が発車してしまう。

とはいえもう身動きは取れないので、次の駅までこのままでいるしかなさそう。



横目で見ると、私のポニーテールは、外の風を受けてふわふわとたなびいている。

向かいにもたれかかっているでっかいおばちゃんと目が合う。

でっかいおばちゃんは目を見開いて、

「それ外出てるけど大丈夫?」

と近づいてくる。

近づいてくると、そんなにでっかくなかったことが分かる。

私よりちょっとでっかいくらい。

でっかいはでっかい。

私が

「大丈夫です」

と返すと、

おばちゃんは食い下がる。

「おばちゃんが引っ張ってあげよう」

私も

「大丈夫ですから」

と食い下がる。

するとおばちゃんは、

「そっか」

と席に戻って行った。

やっぱり戻るとでかかった。


虚空を見つめていると、優先席のおじいさんと目が合う。

おじいさんも虚空を見つめていたのだとすると、この視線のぶつかりはロマンチックだと思う。

会釈すると、おじいさんはにこっと笑顔を見せてくれた。

嬉しかった。



だんだん電車の速度が上がっていく。

私の車外のポニーテールも、激しくなびいて行く。

ポニーテールの横を色んなものがスレスレを通って行く。

カラスや、虫や、電線など。

カラスは色、ヴォリュームなどにおいて、私のポニーテールといい勝負をしていた。

電線には細さで勝てなかった。

虫は目視では確認できなかった。


電車の速度は上がり続け、風圧に負けたポニーテールは、電車のボディにピタリと張り付いて静止してしまった。

電車ってやっぱり速いんだなあと思う。

私もピタリと壁に張り付いて静止している他なかった。この状態を「ポニーテール」と呼びたい。


しばらくして、電車は赤羽駅に到着する。

ドアが開いた。

私は「ポニーテール」を解除し、無事下車する。

確認したところ、ポニーテールはちゃんと付いていた。なにより。

ちょっと長さが短くなっている気がしたが、それは気のせいだと思う。

ドアが閉まり、電車が行ってしまう。

しかし今日は用事があるのは赤羽ではない。

東十条まで行かなければならなかった。

時間に着くのはもう無理なので、着いたら色んな人に謝ろう。

次は、ポニーテールや降車駅に気をつけて電車に乗ろうと思う。

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