日記


今日は、暇だったのでこたつを出す。

暇だったし、寒かったからだ。

収納からこたつ布団を出してベランダに干す。

布団をふぁさあっと広げて物干し竿にかける。

すると、隣の部屋から

「こたつっすか??いいっすね!最高っすね!」

と声が飛んでくる。

私はめんどくさかったので

「あはは〜でしょ〜」

とごまかしていると、

「ちょ、入りに行かせてください!」

と、

隣の部屋の人(隣人)は衝立を越えて

私のベランダに侵入してくる。

めんどくさすぎる。

めんどくさすぎて何も言えずにいると、

侵入に成功した隣人は

「これ持っていきますね」

と干したての布団を私の部屋に引っ張っていく。

「そっち持ってください」

と、机の天板を持たされる。

「一回ベットの上置きましょう」

さすがにベットの上に置くのは嫌だったので

「いやです」

と言うと

「いや、じゃあどこ置くんですか」

とキレられてしまった。

まあたしかに、とも思ったので

隣人に従ってベットの上に置く。

布団を広げて、天板を戻し、こたつが完成する。

「スイッチ入れますわ!」

と隣人がスイッチを入れると、じわじわとあたたかくなるこたつ。

「最高すね!」

と隣人。

私も最高だ、と思い足を伸ばす。

すると、隣人の足とぶつかってしまう。

あっ、と足を引っ込めるものの、隣人は微動だにしない。

「最高すわ!」

と隣人。

しばらくすると、インターホンが鳴る。

出ると、

「うす!」

「うす!」

隣人と挨拶を交わす。

「海斗と康太っす!こいつら、こたつフリークだから!」

と隣人。

やってきたのは、海斗と康太だった。

海斗はツーブロックで、康太は普通の髪型。

康太の方は、手に大きなカゴを提げている。

「なんですかそれ?」

と聞くと

「キンクマっす!」

と康太。

キンクマは、カゴの中で滑車を全力疾走している。

うちのアパートはペット禁止なので、
大家さんにばれてしまうとめんどくさい。

海斗と康太は

「最高っすね!」

「最高っすね!」

と言いながらこたつに侵入してくる。

こたつフリークだった。

キンクマのカゴも、こたつの端の方に入れられている。


それから、2時間喋って隣人と海斗と康太は帰って行った。


海斗のツーブロックの話で1時間、

康太のキンクマの話で1時間でちょうど2時間。


ちょうど海斗のツーブロックの話が佳境に差し掛かったぐらいのところで、

またインターホンが鳴る。

出ると

「大家です〜」

やばい、ハムスターがばれてしまったか。

たしかにこたつの中のキンクマは、

ずっと滑車のカラカラ音をさせていた。

やばい、もし動物持ち込みがバレたら、

大家さんによる往復ビンタののち、即退居という決まりになっている。

この前もひとつ下の階の男が両頬を腫らしながら退去して行くところを見た。

ちなみに、男はサモエドを飼っていたが

匂いでバレてしまったらしい。


ドアを開けると、

大家さんは部屋の中を見るなり

「最高だわ!」

とこたつの中に滑り込んでくる。

大家さんもこたつフリークだったのか。

とりあえずキンクマには触れられず安心した。

もう机は四辺埋まっていたので、

大家さんは、ちょっと迷って海斗の真横に着席する。

海斗は

「うす」

と、ちょっと横にずれる。

それから、

「俺のキンクマの話をしよう!」

と康太。

1時間キンクマで喋る。

ずっとひやひやしていたが、最後まで大家さんに気づかれずに終わった。

途中、

「このカラカラ、なんの音?」

と大家さんに言われ、私はとっさに

「これは、え、もしかして、海斗、お、おならしたな〜!」

と言い切り抜けた。

大家さんはおならの音だと思ってくれたようだ。

それからカラカラと音がするたび、

大家さんは海斗の方を見て

「やだ!もう」とちょっと恥ずかしそうにしていた。


帰り際に

「みなさんほんと、こたつフリークなんですね」

と言うと、全員に無視される。

こたつから出されたキンクマは、息を荒らげ

ゼエハア言っている。

こたつで2時間走ったら、それはそうか。

「俺のキンクマが疲れている!」

と康太。

隣人と海斗と大家さんは

「わはははは」

と笑う。

大家さんもなぜか笑っている。

とりあえずその場では怒られなくてよかったものの、かなり怖い。


玄関を出る時、ちゃんと4人とも

「お邪魔しました」

「お邪魔しました」

「お邪魔しました」

「お邪魔しました」

と出て行った。


4人が出て行ったあとのこたつは、広く感じた。

やっとゆうゆうとくつろげる。

ものの、大家さんがいつキンクマの件で訪ねてくるのではないかと、怖くて仕方がない。

両ほっぺ冷やしとこう。

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