日記(マスト)

今日は、スーパーに行くと、

入り口でガラポン抽選会が開催されていた。

立ててあったのぼりに

『全員参加』

と書いてあったので近づいてみると、

「参加しますか?」

と、スタッフのおばちゃん。

参加しないという選択肢もあるんだね。

「はい」

と答えると、さっそく回させてもらう。

ガラガラを回すなんて久しぶりなので、

行為自体が楽しい。


ガラガラ〜


赤色の球が出た。

すると、おばちゃんが目を丸くしてベルを手に取る。

チリンチリン

なんか良いやつなのだろうか。

それから、

「優勝〜〜〜」

と、おばちゃん。

おー。

すごい。

「お客さん」

「はい」

「赤、初めて見ました!!」

とおばちゃん。

「赤を初めて見た」というはずはないので、

おそらく「赤玉が初めて出た」ということだろうと思う。

でも嬉しい。


当選表を見ると、

1等 金
2等 赤
3等 青
4等 緑
5等 白

となっている。

赤玉は上から2番目。

おばちゃんは「優勝」と言ってくれたが、

1等ではなかった。

そんなに甘くない。

でも嬉しい。



おばちゃんは

「じゃあ優勝カップ…」

と足元をごそごそする。

優勝カップ?

2等にも何かもらえるのだろうか。

すると、

「はーい」

と、おばちゃんが手渡してきたのは、

ちょっとした赤ちゃんくらいある大きな花束だった。

生花。


私は、

「あ、ありがとうございます」

と受け取る。

ずっしり来る。

すると、

「花瓶あります?」

と、おばちゃん。

花瓶はたしか、引越しの時に手放した気がする。

「ないかもしれないです」

と答えると、

「じゃあ小瓶は?」

と、おばちゃん。

小瓶もない。

この前のゴミの日に出してしまった。

「ないですね」

「なるほど」

とおばちゃん。

この花束にちょうど良いサイズの瓶だったので、惜しいことをしてしまった。

こうなると分かってれば。


すると、

「まあ」

とおばちゃん。

「水に、つけてあげてくださいね!」

それはそう。

「はい」

花瓶はどこかで買って帰ろう。

それから、

「はい、ありがとうございました〜」

と、送り出された。


花束を抱えたまま買い物を終えてスーパーを出ると、

「お客さん!お客さん!」

さっきのおばちゃんが、スーパーに入ろうとしているおばあちゃんを呼び止めようとしている。

「お客さん!」

「お、お客さん!」

「お客さん!!」

ようやくおばあちゃんが振り返る。

「全員参加です」

「ね!」

と、おばちゃん。

「ああ…」

おばあちゃんは、ゆっくり踵を返す。

「はい!」

「はい…」

私は、花束とビニール袋を抱えながらそれを眺めていた。

ああ、マストだったんだなあ、と思った。

あと、マストじゃなさそうでマストなこともあるもんだなあ、と思った。

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